日中の「互恵」 拡大へ率直な対話重ねよ

西日本新聞 オピニオン面

 中国の王毅国務委員兼外相が先週、新型コロナウイルス対策での日中連携などを呼び掛ける習近平中国国家主席のメッセージを携えて来日した。

 菅義偉首相、茂木敏充外相との会談では、ビジネス関係者の往来再開に加え、来年の東京夏季五輪、再来年の北京冬季五輪の開催を互いに支持し、協力することなどでも合意した。

 ただ、日中関係がこれで大きく前進したとは言えない。日本側が尖閣諸島周辺などでの中国の強引な現状変更の動きや香港の自治抑圧に懸念を示したのに対し、王氏は反論して譲らなかった。日中が「互恵」を掲げつつも相互不信は根強い構図が改めて鮮明になった格好だ。

 菅政権は引き続き中国との率直な対話を重ね、習政権に自制を促しながら東アジアの平和と安定を図る、地道で毅然(きぜん)とした外交を進めていく必要がある。

 菅政権の発足後初となった今回の日中要人の対面会談は、中国側が望んだものだ。背景には米国に対するけん制の意図も透ける。米政権がトランプ氏からバイデン氏に代わっても中国に厳しい姿勢で臨む外交路線は変わらないとみられるため、対日接近を図ることで日米関係にくさびを打ち込む狙いだろう。王氏は今回韓国も訪問し、中韓協調の姿勢もアピールした。

 そうした中国の動きには焦りの色もにじむ。日米とオーストラリア、インドは「自由で開かれたインド太平洋」を合言葉にスクラムを組む。民主主義や国際ルールを重視する価値観外交だ。同様の中国への警戒感は欧州にも広がる。習氏が先頃、米国が離脱した環太平洋連携協定(TPP)への参加検討の意向を示したのも「中国包囲網」を意識した動きと言えよう。

 日本の民間非営利団体・言論NPOなどが今秋行った日中共同世論調査では、中国に良い印象を持つ日本人は前年比5ポイント減の10%、日本に良い印象を持つ中国人は過去最高だった昨年と同水準の45・2%だった。日中関係は重要と考える日本人は同8・5ポイント減の64・2%、中国人は同7・7ポイント増の74・7%という結果も示された。中国政府にとっては悩ましい数字だろう。

 日本人の対中感情は悪化した一方、中国側では近年の訪日観光人気もあって親日のムードが保たれた形だ。菅政権はこうした現状も見据え、中国とは臆することなく向き合うべきだ。その上で、民間レベルの交流を促進し、互恵の果実を膨らませていく工夫が何よりも肝要だ。

 インド太平洋を語る前に想起すべき日中の約束事もある。東シナ海を平和・友好・協力の海にする-。この言葉を掛け声だけに終わらせてはならない。

PR

社説 アクセスランキング

PR

注目のテーマ