NTTが本気になれば 岩本誠也

西日本新聞 オピニオン面 岩本 誠也

 米国の100ドル紙幣には、ベンジャミン・フランクリンの肖像画が使われている。

 1776年に採択された独立宣言の起草委員を務めた政治家で、米国の「建国の父」の一人。雷の正体が電気だと証明した科学者と言った方が通りがいいかもしれない。

 フランクリンが雷雲の下でたこを揚げ、雷をつかまえたとされるのは250年以上も前のこと。それを再現するような実験をNTTが準備しているという。冗談かと思ったら大真面目だった。

 NTTは、最先端の研究開発の成果を発表するフォーラムを毎年、武蔵野研究開発センタ(東京都武蔵野市)で開いている。新型コロナウイルス感染症の影響で今年はオンラインでの開催となった。次世代の通信ネットワークシステムや人工知能(AI)などのテーマと並び、「落雷制御・充電技術」もあった。

 落雷による施設の被害を防ぐため、AIで落雷の位置を予測して、たこの代わりにドローンを飛ばし雷を安全な所に導く計画。雷エネルギーの利用についても研究し電源として活用するという。

 ハード、ソフト両面の開発を急ぎ「2022年に自然環境での雷制御・充電実験を開始します」。この言い回しからも本気度が伝わってくる。

 宇宙環境エネルギー研究所を7月に新設するなど、NTTはエネルギー分野での取り組みを強めている。

 情報通信の会社なのになぜか。実は、NTTが通信設備やオフィスで消費する電力は国内の全発電量の約1%にも相当するからだ。

 これまでに培った蓄電技術を生かし、蓄電池や自前の送電線で災害時用のバックアップ電力などを供給するサービスを始める。再生可能エネルギーの活用にも積極的で、9月には風力発電事業への参入も発表した。

 陸上に加え、急拡大が見込まれる洋上風力発電の受け入れにも意欲を見せ、30年ごろまでにグループで原発7基分に相当する750万キロワットの再エネ電源獲得を目指すという。

 政府は、50年までに温室効果ガスの排出量を実質ゼロにするとの目標を掲げた。そのためには、技術開発を進めクリーンな再エネを最大限活用する以外に道はない。

 太陽光や風力の発電コストが下がり、世界中で再エネ導入が加速している。発電が安定しない、送電網が足りない、と国内では再エネシフトに否定的な情報がつきまとう。大手電力が原発依存から抜け切れないのが一因だろう。

 再エネに本気のNTTが業界に風穴をあけると期待している。

 (論説委員)

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