苦境の航空業界 路線維持に官民で知恵を

西日本新聞 オピニオン面

 航空ネットワークは現代の社会生活に欠かせないインフラといえる。行政が空港の整備や維持管理、路線の確保に公金を充てるのは、航空機による人の往来や物流が地域の活性化に大きく貢献するからだ。

 航空会社が今、苦境に立たされている。新型コロナウイルスの影響で旅客需要が落ち込み、回復の動きも鈍い。各社は余剰機材の処分、社員の一時出向、賞与カットによる人件費抑制といった対策を重ねているが、打てる手には限りがある。

 コロナ禍収束後に経済・社会活動の再生を速やかに進めるには、航空路線網の維持は不可欠だ。一層の経営努力を前提に、さらに踏み込んだ公的な支援策を検討する必要がある。

 航空会社の経営は固定費の割合が高く、需要急変への対応が難しいとされる。全日本空輸を傘下に持つANAホールディングス(HD)と日本航空は2021年3月期の連結純損益が共に過去最大の赤字になる見通しだ。九州でも地元のスターフライヤー(北九州市)とソラシドエア(宮崎市)の大幅赤字が避けられそうにない。

 離島路線も厳しい。オリエンタルエアブリッジ(長崎県大村市)や日本エアコミューター(鹿児島県霧島市)の9月輸送人員は前年の65%にとどまる。

 政府の緊急事態宣言下の5月を底に旅客需要は回復に転じてはいる。来春には、国内線はコロナ前の水準の7割、国際線は5割まで旅客数が戻るとANAHDは見込んでいる。

 この想定通りに回復するかはかなり不透明だ。国内外で新規感染者が増え、欧州では再び都市封鎖が行われている。感染対策で人の移動の制約が続けば、業績下振れの恐れもある。

 政府は着陸料の減免や支払い猶予、雇用調整助成金の拡充、日本政策投資銀行による資金繰り支援など航空会社や空港関連企業向けの対策を打ち出した。運営権を取得した民営の福岡空港などに対しては投資計画の先送りを認め、運営期間延長を協議するという。ただ一連の対策は急場しのぎの面が強い。

 実際、格安航空会社エアアジア・ジャパン(愛知県常滑市)が破産申請に追い込まれた。今の状況が続けば、路線の縮小・廃止が相次ぎかねない。

 国際航空運送協会(IATA)によると、航空需要が19年の水準に戻るのは早くとも24年になる見通しという。世界の航空大手も経営が悪化し、韓国では業界再編の動きがある。

 資本増強など航空会社の主体的な取り組みで危機を乗り切ることが望ましいが、さまざまな想定外の事態に備え、官民で知恵を絞っておきたい。

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