DV被害者の児童扶養手当申請、「現住所」は不要 自治体が対応誤る

西日本新聞 竹次 稔

 DV(ドメスティックバイオレンス)を理由に離婚し、役所で児童扶養手当を申請した女性から、西日本新聞「あなたの特命取材班」にこんな相談が寄せられた。「窓口で『住民票の住所と実際の住所が異なったままでは手続きできない』と言われた」。元夫に知られないように、あえて住民票の住所変更をしていなかった女性は、しぶしぶ現住所に変更したという。取材班が調べてみると、住所変更の必要はなく、役所の対応は間違っていた。

 女性は九州北部で暮らす。同居から間もなく、夫の強いこだわりを知った。

 朝は生魚、夜は野菜しか食べない。生活費は数カ月間渡されないことも。店で買おうとしたものを売り場に戻され、家電、家具は無駄になるからと買ってもらえなかった。理由なく内鍵を閉められたこともある。

 女性は夫の言動に混乱し、日ごとに追い詰められた。3年ほどで別居。病院へ行くと、精神的DVによるうつ病と診断されたが、子どもと2人、なんとか生活を続けてきた。夫との裁判は長く続き、離婚が成立したのは今年。この秋、児童扶養手当を申請するため自治体窓口を訪れた。

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 元夫の嫌がらせを恐れ、女性は住民票の住所とは別の場所で暮らしている。首をかしげながらも、職員の指示に従い、住所登録を変更した。手当の支給決定と同時に、DV被害者らの保護を目的に、元夫側への住民票などの交付を制限できる「支援措置」を同じ自治体に申請し、すぐに認められた。

 支援措置を受けていれば、住民票が元夫に交付されることはない。女性は安心できるはずだが、実際には自治体内の連携が取れていないことから、住所がDV加害者側に漏れたケースは全国で起きている。総務省によると、2011年度以降に63件起きた。

 わざわざ住所変更させた上で、秘匿する制限を設ける今回の対応は正しかったのか。

 取材班が厚生労働省の担当部署に問い合わせると、1985年の旧厚生省時代の担当課長通知に基づき、住所変更せずに受給できるとの見解だった。

 この通知を基に自治体とやりとりすると、担当者は「職員などの訪問調査で居住実態が確認できれば、住所変更は不要だった」と一転、誤りを認めた。役所側は女性に謝罪し、結局、元の住所に戻すことができたという。女性は「手続きが終了し、ようやく心から安心できるようになった」と話した。

 1人親世帯などの問題に詳しい後藤景子弁護士(北九州市)は「女性を危険にさらす対応だ。同じような誤った解釈が他の自治体でもないのか、検証が必要だ」と指摘している。(竹次稔)

 【ワードボックス】児童扶養手当制度

 離婚や死別などによる1人親世帯を支援する制度。父か母と生計が同じではない母子・父子家庭などに対し、子どもが18歳に達する日以後の最初の3月末まで支給される。子ども1人の場合だと、月額で最大4万3160円となり、所得に応じて減額される。受給者数は全国で約92万人。

 

 

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