現代の「赤ひげ」さんに感謝を

西日本新聞 オピニオン面

 入院ベッドを備えた小規模な医療施設を「有床診療所」という。「医院」「クリニック」などの名称で、風邪など日常的な病気を診てもらえる身近な存在だ

▼あすは「有床診療所の日」。享保7(1722)年12月、日本初の病床を併設した診療所「小石川養生所」が江戸に開設されたことにちなむ

▼病に苦しむ貧しい人々を救う施設を-。町医者小川笙船(しょうせん)が目安箱に投じた訴えが将軍徳川吉宗を動かした。小石川薬園に設けられた養生所では、薬を買えない者や看病する人がいない患者を無料で診療。幕末まで140年以上、庶民に医療を提供した

▼新型コロナ禍の今、医療機関のありがたさを改めて実感する。政府のキャンペーンで多くの人が旅行や飲食を楽しむ中、医療従事者は休む間もなく感染の「第3波」と闘っている

▼過重な負担に倒れそうになりながら、地域医療を支えようと踏ん張ってくれている姿に頭が下がる。一方で、医療従事者や家族がいわれなき偏見や差別に苦しんでいると聞けば胸が痛む

▼山本周五郎の小説「赤ひげ診療譚(たん)」は小石川養生所が舞台。笙船がモデルの医者が庶民に寄り添い救済に尽力する物語だ。医療に従事する現代の「赤ひげ」さんたちに思いをはせたい。あすから「人権週間」も始まる。人権の根幹は命の大切さ。世界人権宣言は「すべて人は、生命、自由および身体の安全に対する権利を有する」とうたっている。

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