唯我独尊と動脈硬化 久保田正広

西日本新聞 オピニオン面 久保田 正広

 今から79年前の12月は軍事の歴史の大きな節目だ。

 まず8日。日本海軍の空母機動部隊がハワイ真珠湾を奇襲攻撃し、米太平洋艦隊の主力に壊滅的打撃を与えた。

 太平洋戦争の始まりであるとともに、航空機が戦争の主役となる時代の幕開けだ。

 10日はマレー沖海戦。英国東洋艦隊を日本軍は地上からの攻撃機で襲い、最新鋭戦艦も沈めた。真珠湾は停泊していたのに対し、マレー沖は捕捉の難しい移動中だった。

 当時の英国首相はチャーチル。欧州戦線でヒトラーのドイツに追い詰められていた。

 真珠湾攻撃で米国の参戦が確実となり、これで戦争に勝てると確信し、その夜はぐっすり眠れた、と後に書いている。マレー沖海戦の方は「戦争の全期間を通じて、これほどの衝撃を受けたことはなかった」と回想している。

 1941年、歴史の歯車が動いたと感じる。

 「大艦巨砲」重視から航空主力の時代への先駆けとなった日本。16日には世界最大の戦艦「大和」を完成させている。戦艦としては最高傑作だったが、時代の変化には取り残され、さしたる活躍もないまま米軍機に沈められた。

 大和完成の翌月のこと。日本陸軍が自前の「空母」をひそかに完成させていた。

 「あきつ丸」。資料画像を見ると、飛行甲板を備えた空母の姿である。扱いはあくまで民間所有の特殊輸送船で、陸軍の補助金で造り、徴用する段取りだったという。さすがに公然と空母を持つわけにはいかなかったようだ。

 日本は島国であり、陸軍が各地に展開するためには輸送船団の安全が大前提となる。通常は海軍の艦船に守ってもらうのだが、ここで旧日本軍の構造問題にぶつかる。

 「縦割り」である。海軍といろいろ調整するより自力で済ませたい。輸送船を守る護衛空母も造っておきたい、となる。専門家によれば、世界の陸軍史上唯一の例とか。

 今年11月28日、菅義偉首相は自衛隊の行事で訓示した。「組織の縦割りを排し、陸海空の垣根を越えて取り組むことが重要」-。宇宙やサイバーなどの新領域で対処する心構えを説いたとみられる。

 自衛隊に旧陸海軍のような問題はないのか。陸海空の文化の違いを内部で自嘲気味に語る四字熟語がある。旧海軍の人員を継いだ海自は「伝統墨守、唯我独尊」とされ、全体の6割を占める巨大組織の陸自は「用意周到、動脈硬化」。

 3自衛隊の予算や定員には長く変わらない比率や枠がある。縦割りを排するのは部隊や隊員ではなく、政治の仕事だ。 (論説副委員長)

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