香港民主派弾圧 自治の約束踏みにじるな

西日本新聞 オピニオン面

 民主的な社会を望んでいるだけの香港市民に対する弾圧を断じて許してはならない。中国は不当な強権発動を即刻停止し、国際社会との約束である香港の「高度な自治」と「一国二制度」の保障を履行するべきだ。

 香港で民主化運動を主導してきた活動家への抑圧が苛烈になっている。日本でも著名な周庭氏ら3人に禁錮刑の実刑判決が下った。香港政府に逃亡犯条例改正案の撤回を求める無許可デモを扇動したとして起訴されていた。

 犯罪歴もなく早い段階で起訴内容を認めた周氏は執行猶予や社会奉仕活動といった軽い量刑で済むとの見方もあった。判決はそれを上回る厳罰で、香港の司法も市民の権利を守る防波堤にはなり得ない実態を示した。

 判決の翌日には中国に批判的な地元紙の創業者黎智英氏が収監された。ビル家賃を巡る詐欺罪に問われている。民主派の重鎮である黎氏は米政府要人と会談するなど周氏らと同様、言論の自由を訴える象徴的存在で国際社会にも影響力を持つ。

 それだけに香港当局には中国の人権状況に批判的な国際的な世論の拡大を危ぶみ、民主派による情報発信を封じ込む狙いがあるのだろう。

 香港の現状は現地政府や後ろ盾の中国政府が主張する「平和で安全な秩序ある社会」とは到底言い難い。いつ誰が拘束されてもおかしくないような状況になり、市民が萎縮し、デモが抑え込まれているにすぎない。

 政治弾圧は、今年6月に中国が香港の頭越しに国家安全維持法(国安法)を成立させて以降激しくなっている。

 先月には香港立法会(議会)議員に政府への「忠誠」を義務付けた上で民主派4議員の資格を剥奪した。これに抗議して辞職した元議員の1人は海外で亡命を求める事態に至っている。

 香港では人々がこうして中国本土と同じ強権体制へ組み込まれる事態に危機感を強める。

 英国からの香港返還時に中国は「高度な自治」と「一国二制度」を2047年まで維持すると約束した。国安法制定や一連の弾圧は明らかにこれを破るものである。それを指摘する批判は「内政干渉」などではない。

 香港民主派やウイグル族、チベット族への抑圧に加えモンゴル族に対する締め付けも最近、問題視されている。こうした横暴な行為が中国に対し内外の不信と警戒を高めている現実を、習近平指導部は直視すべきだ。

 まさしく民主主義や言論の自由の危機である。日本や欧米は繰り返し懸念を表明してきたが、今回の事態を重視し、結束して中国に弾圧をやめるよう一層強く求めていかねばならない。

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