「あまおう」守る種苗法 竹次稔

西日本新聞 オピニオン面 竹次 稔

 例えば、福岡県が生んだ特産イチゴ「あまおう」が中国などの海外で栽培され、市場に出回るのを防ぐ-。これを狙った改正種苗法が2日、成立した。

 大きく甘いあまおう(品種名=福岡S6号)のように特性を備えた新たな品種を育成して国に登録すると、開発者は植物の特許である育成者権が得られる。その制度を定めるのが種苗法だ。

 改正法はこれまで認めていた農家の「自家増殖」の規定をなくした。次の栽培に使う種苗を収穫物などから取り出す行為である。禁止にしないものの育成者の許諾が必要になることから、「生産の自由を損なう」などとして改正反対の声も上がった。

 あまおうを例に、自家増殖の制限について考えたい。

 苗さえあれば、イチゴは国内外どこでも栽培できる。県農林業総合試験場によると、イチゴ農家は毎年10アール当たり約7千株の苗が必要で、その多くを農家自ら増殖する。

 ただ自家増殖を続けると、ウイルス耐性が年々弱まるため、県と許諾契約を結ぶJA全農ふくれん経由で新株を購入し、一部更新することを農家は繰り返している。

 県はあまおうの栽培を県内に限定し、独自品種としてブランド化を図った。ただ、自家増殖で作り過ぎた農家が、余剰分を県外の知人に譲るケースなど不用意な対応も一部であったという。

 そんなことが海外流出につながる。そこで増殖する場合、育成者はその規模の申告を農家に求めることになる見通し。「流出防止という管理意識を改めて促すのも法改正の狙い」と担当者は説明する。

 特に福岡県は2005年のあまおう登録を機に、育成者権を守る取り組みを強めた。品種判別するDNA分析法を確立し、流出事例などを全国の自治体で共有するネットワークの構築を主導した。苗を外部に持ち出さないよう農家から誓約書を取るなどして、今回の法改正を先取りしてきた面もあるだろう。

 自家増殖の制限で種苗代が上がるのでは、との懸念もあるようだ。ただ育成者が行政なら、農業振興が新品種の目的。あまおうも苗代に含まれる許諾料はごく低額で、農家の負担となる増額は考えにくい。「提出書類が増えるぐらい」と関係者は言う。

 登録期間が過ぎた多くの一般品種は、これまで通り自由に自家増殖できる。一方、登録品種をむやみに拡散させないことが、ブランドを維持して、高品質の農産物を消費者へ安定的に届けることにつながるはずだ。 (クロスメディア報道部)

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