「自助」負い目に…複雑化するコロナ困窮 識者「寄り添う支援を」

西日本新聞 一面 久 知邦

 長引く新型コロナウイルスの感染拡大が暮らしを直撃し、仕事や住居を失う人が増えている。困窮者にはこれまで公的支援とは無縁だった若年層や女性も目立つが、給付金などの支援策は相談までの心理的なハードルが高かったり、情報が届いていなかったりして救済につながらないケースもある。困窮の理由も一つではなく、識者は「伴走型」の支援の必要性を訴える。

 11月下旬、NPO法人自立生活サポートセンター・もやい(東京)が都庁前で行った弁当配布に160人超が列を作った。

 動画投稿サイトユーチューブ」で知り、初めて訪れた熊本県出身の男性(31)。この数年、日雇いの仕事をしながらその日暮らしを続けてきた。緊急事態宣言が出された春以降、仕事がなく、以前、リゾート施設に住み込みで働いてためたお金も家賃などで底をつきそうだ。記者が行政への相談を勧めても、「年内に仕事が見つかれば何とかなる」と拒んだ。

 同団体によると、毎週の弁当配布に並ぶ人は150~180人。例年の約2倍で半年以上同じ状況が続く。若年層も目立つといい、大西連理事長は「ぎりぎりの生活をしてきた若者が今回初めて困窮している。これまで日雇いで何とかなった経験からまだ大丈夫と考え、支援につながらない」と危惧する。

 路上生活者らを支援するNPO法人「TENOHASI(てのはし)」(同)によると、10月末までに相談があった165人のうち6割が30~40代で、1割超が女性。例年は50代以上が大半で、女性はほとんどいなかったという。コロナ禍の困窮者は多様だ。

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 厚生労働省によると、新型コロナの影響による解雇などは11月27日時点で約7万4千人。東京商工リサーチの調査では、関連する経営破綻も700件を超えた。第3波を受け、飲食店の営業時間短縮要請などが打ち出され、関係者からは悲鳴が上がる。雇用を取り巻く情勢は厳しい。

 非正規労働者の増加やリーマン・ショックによる派遣切りの問題などを受け、2013年に生活困窮者自立支援法が成立。最後のセーフティーネットである生活保護に至る前段階から公的支援を用意し社会復帰を促せるようになった。政府は新型コロナの感染拡大を受け、個人向けの給付金や家賃補助の要件を緩和するなど支援を強化している。

 ただ、こうした公的支援は当事者に必ずしも届いていない。TENOHASIの清野賢司事務局長は「料金滞納でスマホを止められ、無料Wi-Fiがつながる場所で日雇いの仕事を必死に探している人もいた。検索エンジンのトップニュースに上がらない限り、目にとまらない」と話す。

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 心理的なハードルもある。立教大の後藤広史准教授(公的扶助論)は「自立支援法は生活困窮が深まらないうちに利用することを目的に作られた制度。もっと気軽に利用していいはずなのに、最後の手段と捉えている人も少なくない」と指摘する。菅義偉首相が強調する「自助」の意識がすり込まれ、仕事をしていない負い目が利用をためらわせているとみる。

 新型コロナで困窮した福岡県中間市の101世帯の調査をした大阪市立大大学院の垣田裕介准教授(社会政策)によると、相談者に障害やその疑いがあったのは42人で、家族に障害があるケースも少なくなかった。以前から借金があったのは少なくとも69世帯、ひとり親は24世帯だった。

 垣田准教授は「困窮の要因は複合的に絡み合っており、相談につながっても減収に給付金や貸付金を充てるだけでは解決しない。継続的に寄り添い、問題を解きほぐすような支援が求められていることをコロナ禍は改めて浮き彫りにしている」と話す。

(久知邦)

 【困窮者への主な支援】新型コロナウイルスの影響で困窮した人を対象とした政府の個人向け貸付制度(無利子)には、緊急小口資金(最大20万円を1回)と総合支援資金(最大月20万円を原則3カ月)の2種類がある。いずれも市町村社会福祉協議会が窓口で、年内までの申請期間は来年3月末まで延長される見込み。家賃を補助する住居確保給付金も4月に受け取り始めた人が12月に期限切れとなるため、受給期間は延長の方向となっている。厚生労働省は年末年始にかけて仕事や住居を失う人が増える恐れもあることから、全国の自治体に臨時の相談窓口を開くなど支援態勢の確保を求める通知を出している。

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