人権週間 コロナ差別許さぬ対策を

 今年も人権週間(4~10日)を迎えた。国連が世界人権宣言を採択した1948年12月10日を記念し、日本政府が翌年、独自に設けたものだ。

 この宣言は、先の大戦で多数の命が奪われ、人権が踏みにじられたことへの痛切な反省が出発点である。日本国内では、それ以前の22年に結成された全国水平社による反差別・部落解放運動や現在の憲法と融合する形で、その精神は進化した。

 今や「人権」は、個人の尊厳を重視し、一人一人の差異を個性として認め合う大きな思想になったと言えるだろう。人権教育・啓発推進法などにより、学校や職場で、そうした考え方が広く共有されている。

 ただ一方、現実社会の中で私たちの人権意識はもろさを露呈することが少なくない。今年でいえば、新型コロナウイルスの感染者や医療従事者といった人々への差別や偏見である。

 感染者やその家族が誹謗(ひぼう)中傷を受けた▽医療関係者がタクシーの乗車を拒否された▽その子どもが通園バスに乗れなかった▽県外ナンバーの貨物車が嫌がらせをされた-などの事例が九州をはじめ各地で報じられた。

 コロナ感染への恐怖は誰もが同じはずだ。それでも個々に防止策を尽くしながら、患者の救護の任に当たったり物流を継続させたりと、社会のため、この瞬間も職務を全うしている。

 心ない差別と偏見に、医療機関などが抗議声明を出した。自治体の間にも「コロナ差別」の禁止条項を盛り込んだ感染症対策条例の制定が広がる。

 東京都の条例は都民と事業者に対し、感染または感染の恐れがあることを理由に「不当な差別的取り扱いをしてはならない」としている。当然である。

 とりわけインターネットの会員制交流サイト(SNS)で根拠もなく他者を誹謗し、それを拡散する行為は強い非難に値する。何より科学的根拠に基づく情報が必要だ。政府は専門家の提言を適切に広げてほしい。

 SNSによる人権侵害はコロナ関連だけではない。プロレスラー木村花さんは出演したテレビ番組での言動に非難が集中し深く傷ついた後、亡くなった。番組制作上の問題を浮き彫りにし、政府にSNS上の人権対策を急がせる結果も生んだ。

 法務省によると、昨年の人権侵犯事件は1万5400件余りで、過去10年でも最少だった。2016年施行の人権に関する3法(部落差別解消推進法、障害者差別解消推進法、ヘイトスピーチ対策法)による啓発などが一定の成果を上げているようだ。ただネット上の人権侵犯は2番目に多く1980件を超えた。粘り強い対策が必要だ。

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