「会えなくても…子どもたちに笑顔を」 高校生が動画で寄付呼び掛け

西日本新聞 くらし面 四宮 淳平

「コロナ禍の子」(7)ボランティア

 表情が伝わるようにマスクを外し、武末愛理(あいり)さん(17)と井上瑞英(みずえ)さん(17)は並んで座った。福岡県久留米市の祐誠高2年で同じクラスに在籍する2人は、担任が構えるスマートフォンのカメラを見つめながら語り掛けた。

 「7人に1人の子どもが貧困という壁に直面している事実を、みなさんは耳にしたことがありますか」「私たちが初めて聞いたとき、この数字はとても大きなものに感じました」

 続いて、NPO法人「アスイク」(仙台市)を紹介した。法人は保育園や児童館、フリースクールの運営に加え、フードバンク、子ども食堂も手がける。2011年の東日本大震災の発生直後、被災した子どもたちの学習支援からスタートしたという。

 2人は手書きのイラストを掲げ、寄付を呼び掛けた。「子どもたちが安心して心から笑い合える場所、自分の気持ちに正直になれる場所、偽りのない自分を見せられる場所、その場所はアスイクです」

 動画を制作するきっかけは、武末さんが夏休み前にインターネットで見つけたサイト「中高生によるチャリティームービープロジェクト」。全国五つのNPOのいずれかを選び、寄付を呼び掛ける動画を作る内容だった。

 武末さんは以前から、夏休みに未就学児と親を集めて行う育児支援活動にボランティアとして参加。コロナ禍の今年は活動が中止となり、「代わりに何かできないだろうか」と考えていた。

 見つけたプロジェクトの内容を印字し、学校で井上さんに見せた。

 「これ、しない?」

 「する!」

 2人一組で応募することを決めた。応募理由には、武末さんがプロジェクトを探し出した経緯に加え、「実際には会えない環境でも何かしたい」という思いを記した。

 7月下旬、主催者の公益社団法人の日本フィランソロピー協会(東京)から選ばれたとの連絡が入った。

 2人はそれぞれ自宅のパソコンから、ビデオ会議システムで計5回のミーティングに参加。主催者側から映像制作のポイントを教わったり、アスイクの代表理事の話を聞いたりした。

 衝撃を受けたのは、同じ国に住んでいても自分たちとは全く異なる生活を送る子どもが実際にいること。「居場所がなく、コンビニのトイレで一夜を明かすなんて…」。日本では貧困が外からは見えづらく、1人で抱え込みがちだという話に胸が痛くなった。

 オンラインで技術的なサポートを受けつつ、初めての映像作りに取り組んだ。自分たちが感じたことや、アスイクへの応援メッセージで構成し、子どもとボランティアの距離の近さが伝わる写真も紹介することにした。

 いざやってみると、キャスターがニュースを読み上げるだけのように味気なかった。そこで、ハートに包まれた笑顔の子どもやヒーローのイラストを描いた。アスイクをイメージしたもので、これらを示しながら語ることにした。

 2日間で10回以上撮り直し、約2週間の編集で完成させた。公開は、11月上旬からプロジェクトの専用ウェブサイトで始まった。

 コロナ前であれば、直接顔を合わせて行うのが一般的だった作業は全てオンラインで済ませた。移動時間が必要なく、複数の遠隔地の人と同時にやりとりできるシステムの利便性を知った。

 プロジェクトでは、NPO1団体当たり最大5組が動画を作成した。アスイクを選んだほかの4組の映像は、意外な手法を取り入れていたことに驚いた。

 動画は85秒という制限がある中で、ある組は早回しの映像を組み込んで内容を凝縮していた。「こうすれば短い時間の中でも動きがある動画にできるんだ」。もっと工夫の余地があったことに気付かされた。一方、唯一無二の自分たちの表情や声で表現したことには「自分たちらしいものができた」と胸を張る。

 プロジェクトでの寄付の締め切りは来年1月18日。「一人でも多くの子どもを笑顔にしたい」。2人は身近な人にも呼び掛けて支援の輪を広げている。

 (編集委員・四宮淳平)

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