京築広域事務組合「メリットない」組織の背景は

 京築地区の2市5町(豊前市、行橋市、築上郡吉富町・上毛町・築上町、京都郡苅田町・みやこ町)でつくる京築広域市町村圏事務組合が分割・再編に向けて動きだした。組合長の田中純行橋市長が11月の定例組合議会で「2022年4月をめどに再編する」と表明。副市長、副町長らによる実務協議を始める。田中市長が「何のメリットもない」と言い切るこの組織はなぜ存在し、今何が起こっているのか、背景を探った。

消えた「接着剤」

 発足は1970年。当時は2市7町2村(後の市町村合併で築上郡が3町2村から3町に、京都郡が4町から2町に)で構成。均衡ある地域振興や事務効率化に向け広域行政を推進する国の方針に沿って県が指導して各地に作られた一部事務組合の一つだ。

 73年、豊前市などによる京築広域圏消防本部を設置。75年に行橋市と現みやこ町(当時は3町)による学校給食センター、95年に豊前市と築上郡の豊築休日急患センター、98年には行橋市と京都郡の休日・夜間急患センターを設置した。

 ただ、この4事業はいずれも構成自治体全体を対象とせず地域限定で実施。その上、行橋市とみやこ町による給食センターは2014年に廃止。16年には豊築休日急患センターから手を引き、地元医師会に引き継いでもらっており、現在実施するのは2事業だ。

 旧椎田町職員出身で事情に詳しい新川久三築上町長は「広域の振興計画作りが2市2郡の接着剤だったのだが」と話す。構成する各自治体から職員を出し合って、発足当初から策定してきた行政指針「広域市町村圏計画」は02年作成の第4次計画で終了。08年に国が「役割を終えた」として「広域行政圏計画策定要綱」を廃止したためだ。構成自治体が一緒になって計画策定に知恵を絞ることがなくなり組合の存在意義は薄れていった。

否決で決定的に

 再編案が具体化するきっかけは、15年に発覚した同消防本部の元職員による横領事件の事後処理だった。使途不明金は約1億円。うち約7500万円は回収不能。責任問題や関係者への任意の損失補填(てん)協力依頼、民事訴訟提訴や和解など、議論は何年も続いた。同本部に加わっていない行橋市の田中市長は「一言も発言しないのに延々と時間をつぶされ続けた」と漏らす。

 逆にそれ以前、行橋市とみやこ町が給食センター問題でもめた際には、他の首長らが長時間付き合わされたという。それぞれに不満をためていた。

 そして今年1月の定例組合議会での議案否決が、分割・再編の流れを決定的にした。複数の理事や議員によると「議案の内容より、豊前市の政争が議決に反映された」という。「時間の無駄」と話す田中市長は直後の理事会で組合長辞任を表明。ただ理事の間には慰留の声が強く、組織見直しに動くべきだと後押しする意見が相次いだ。

組合の議決不要

 分割・再編とは、例えば「広域圏消防本部だけ残し、枠外の行橋市と苅田町は離脱。行橋・京都郡の休日・夜間急患センターは新たな組織を発足させて移管」といった案だ。田中市長は「京築(2市5町)で行政事務の一本化は無理があった。広すぎる。陳情など首長がまとまって動くときの組織は別につくればいい」と説明。副組合長の後藤元秀豊前市長は「あずかり知らない事柄に議決権がある不自然な形を惰性で続けてきた。発展的に見直した方がいい」と話す。各首長でつくる理事会は再編の方向で足並みをそろえている。

 一方、組合議会は隅に置かれがちだ。組織再編など規約変更に必要な手続きは構成する全市町議会の議決と知事の許可。組合議会の議決は必要ないからだ。ただ組合議員は各市町議員で影響力は小さくない。

 「それぞれの負担金で別々に運営しているのだから割っても支障はない」と行橋市の議員。みやこ町の議員は「議員への説明が足りないため、町の議会で議論できない」と運営を批判。苅田町の議員は「50年の歴史ある組織なので、制度疲労は修正して枠組みを大事にした方がいい」と主張。意見はさまざまだ。

 田中市長が示した再編目標まで1年半もない。2市5町の議会は、どんな結論を出すのだろうか。 (石黒雅史)

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