【コロナ「第3波」】 姜尚中さん

◆機動性支える法基盤を

 新型コロナウイルスの感染拡大は重大な局面を迎えつつあり、オーバーシュート(爆発的拡大)の分岐点にあるようだ。憂慮されるのは、新規感染者の数が最多を更新するだけでなく、重症者の数も同じく最多更新の様相にあることだ。医療現場の逼迫(ひっぱく)は深刻で、崩壊の危機すらささやかれている。

 他方で、最近の世論調査(日本経済新聞社、11月27~29日実施)によれば、政府の新型コロナ対策について「感染防止と経済活動の両立」を求める声が過半数を占めている。国民の多くが、新型コロナの「第3波」におののきながらも、「あれかこれか」ではなく、「あれもこれも」の選択を求める姿が浮き彫りになっている。

 感染を抑止することも、経済を回すこともしてほしい-。この多くの国民の要望を満たすには、言うまでもなく政府の指導力が必要だ。先の世論調査では、政府のこれまでの指導力不足に対する不満が、内閣支持率の低下につながっている現状が明らかになっている。

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 ではこの場合、指導力とは何か。そのために、どんな条件が必要なのか。

 経済を回し、同時に感染抑止を並行的に進めていくためには、いわばアクセルとブレーキを瞬時に踏み換える、臨機応変の機動的かつ柔軟な対応が不可欠だ。誤解を恐れずに言えば、カメレオン的に絶えず変容していける「ご都合主義」的な政策の動員が必要とされている。

 同時に、それが成り立つためには、しっかりとした根拠となるべき法的な裏付けがなくてはならない。その抜本的な裏付けがあって初めて、時々刻々に変化する現実に対応できるのである。

 根拠法となるのは、安倍晋三内閣時の今年3月に成立した改正特措法(改正法)である。

 この改正法は、2013年に施行された「新型インフルエンザ等対策特別措置法」の適用対象に新型コロナ感染症を追加した時限立法で、休業や時短など関係機関による要請に対する損失補填(ほてん)、政府や自治体の要請や指示に従わない施設に対する罰則規定、さらに国の総合調整と知事権限の明確化が欠如しているなど、数多くの問題点が指摘されていた。

 にもかかわらず、改正法の抜本的な見直しに目が向けられてこなかったのは、感染抑止と社会経済活動を両立させたとする「日本モデル」によりかかった、国民の涙ぐましい自粛と自制による「幸運な」結果への思い入れが強かったためではないか。

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 安倍前首相が記者会見で勝ち誇ったように語った「日本モデル」は、今から思えば、社会的な画一行動を律義なほどに「忖度(そんたく)」する、国民的な努力の成果にすぎなかったのである。

 「忖度政治」は、いつかはその限界を迎えざるを得ない。新型コロナの波状的な襲来が繰り返され、生計や事業の壊滅的な打撃が続けば、背に腹は代えられず、「忖度」への配慮が失われていくのは不可避である。

 「日本モデル」に寄り掛かった、ほとんど根拠のない政治や統治の事実上の「不作為」の積み重ねと指導力の弱さが、今日の事態を招いている遠因である。

 自治体の首長と政府がいわば「お見合い状態」で権限と責任を押し付けあっているようでは、国民は明確なメッセージを受け取れず、途方に暮れざるを得ない。

 政府は速やかに改正法の不備を見直し、明確な根拠法のもとに果敢かつ柔軟な機動的で実効性のある「あれもこれも」の施策を実行に移すべきである。

 【略歴】1950年、熊本市生まれ。早稲田大大学院博士課程修了後、ドイツ留学。国際基督教大准教授、東大大学院情報学環教授、聖学院大学長など歴任。2018年4月から鎮西学院院長。専攻は政治学、政治思想史。著作に「母の教え」など。

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