髪のことまで医師に聞けない…悩み分かち合う「がんカフェ」

西日本新聞 医療面 下崎 千加

 お茶をしながら気軽にがんについて語り合う医療セミナー「カフェで学ぼうがんのこと」(がんカフェ)が18日、100回目を迎える。患者を支援する福岡市のNPO法人ウィッグリング・ジャパンが「患者と医師の垣根をなくしたい」と、久留米大(福岡県久留米市)の専門医らを講師に迎え、2011年からほぼ毎月、福岡市で開いてきた。コロナ禍もオンライン開催で乗り切り、東京や愛知にも交流の輪を広げている。

 11月26日、同市・天神で開かれた99回目のがんカフェ。「肝臓がん」をテーマに、専門医が9月から点滴による免疫療法が可能になったことなどを説明した。

 「ネットに情報があふれる中で、原因や症例、最新の治療法まで現場の医師に体系立てて分かりやすく説明してもらえる場は他にない」。こう話すのは福岡県筑紫野市の田口和弘さん(66)。03年、41歳の妻をスキルス胃がんで亡くした。2人に1人ががんになるといわれる時代、自身も学ぶ必要があると7年前から参加し、50回以上になる。「もし将来がんになっても、ここで得た知識は強い味方になってくれる」

 がんカフェは、抗がん剤治療で髪が抜けた女性に医療用ウィッグを貸し出す活動をしている同法人が、11年から始めた。試着に来た女性たちが「髪のことまで主治医に聞けない」「他の治療法がないのか質問したいけど…」と医師への不満や気後れを口にすることが多かったからだ。理事を務める山田亮・久留米大先端癌治療研究センター所長(63)が医師を講師にしたセミナーを提案し、上田あい子代表理事(46)がカフェ形式を思い立った。

 テーマは日本人に多い「五大がん」(肺がん、胃がん、肝臓がん、大腸がん、乳がん)の他、アピアランス(外見)ケアやリンパ浮腫への対応など女性の悩みにも寄り添う。講師は久留米大の他に症例の多い民間のクリニックや病院にも依頼する。

 会場費や茶菓子代、講師への謝礼は、1500円の参加費と、民間からの寄付金や助成金で賄う。1時間半のうち30分を質問時間に充てているのは「患者の悩みをじっくり聞く経験は医師にとっても大切」(山田さん)だからという。

 「この年で抗がん剤治療は不安。他の医師にセカンドオピニオンを求めたいけど主治医に悪いでしょうか」と質問した90代の女性患者に、専門医は「医師は患者が納得して治療し、良くなることを望んでいる。もし機嫌を悪くするようなら、それだけの人」とアドバイスした。乳がんを患う女性が「先生が目を合わせてくれず、通院がつらい」と漏らすと、医師は「相性が合う合わないがある。専門医はたくさんいるので、ストレスに感じるなら主治医を代えてもいい」と答えた。参加者同士が互いに助言し合ったりもする。

 感染予防のため、3~5月はオンラインで開催。6月からは、意見交換しやすいようコの字型に配置していた机をスクール形式に変更し、参加者を15人以下に制限して開いている。オンラインでの参加も可能にした。すると東京や愛知、大阪、熊本、鹿児島の離島などからの参加もあった。

 上田さんは「最近は患者や家族だけでなく、介護職や保険会社の外交員など、当事者の気持ちを理解したいという人たちが参加するようになってきた。一人じゃないよ、と実感できる温かい雰囲気になってきている」と話す。

     **

 18日は午後3時半~5時に福岡市・天神の久留米大福岡サテライト(エルガーラオフィス棟6階)で。山田さんが「コロナ禍のがん医療とインフルエンザ対策」と題して話す。オンライン参加も受け付けている。参加費1500円。参加予約はウィッグリング・ジャパン=092(725)6623。

 (編集委員・下崎千加)

PR

医療・健康 アクセスランキング

PR

注目のテーマ