浸水想定区域で人口増 福岡11%、全国6%増…河川流域で宅地開発進む

 河川が氾濫した場合に浸水が想定される「洪水浸水想定区域」の居住人口が1995年から2015年までの20年間に、全国で6・04%増えたことが国土交通省の調べで分かった。この間の総人口の増加率は1・21%で、これを大きく上回っている。このうち九州5県を含む28道府県では、人口減にもかかわらず区域内の人口が増えていた。

 既存の市街地で高齢化や人口流出が進む一方、それまで田畑などだった河川流域で宅地開発が進む地方の実態を裏付けた。政府内にはこうした傾向を踏まえ、公共事業による国土強靱(きょうじん)化だけではなく、土地利用の規制や誘導などに踏み込むべきだとの声もある。

 予算査定に当たる財務省の要請を受け、国交省が調べた。想定区域は随時更新されるため、12年度時点のものを95年と15年の人口分布に当てはめ、都道府県ごとにまとめた。

 都道府県別では39都道府県で想定区域の人口が増えた。このうち首都圏など11都府県は総人口も増えているが、うち7都県では区域内人口の増加率が総人口を上回っている。区域内の人口減も8県あったが、うち6県は総人口の落ち込みの方が大きい。

 九州7県では、佐賀を除く6県で想定区域の人口が増えた。このうち福岡だけは総人口が増加したが、ほか5県は減少。特に長崎は総人口が10・86%減、区域内人口が10・10%増と大きな差が出た。区域内人口の増加率が最も高かったのは福岡の11・31%で、これも総人口の増加率3・41%を大きく上回った。

 都市部の河川が氾濫すると住宅の浸水被害が増えるため、都市人口が増えれば想定区域の人口も増える。ただ、総人口よりも想定区域の人口増加率が高いのは「高台などよりも河川沿いの平地で住宅地やマンションなどの開発が進んでいるからではないか」(九州の自治体関係者)との見方がある。

 12年度時点の想定区域は「数十年から200年に一度の大雨」が前提だったが、15年5月の水防法改正で「千年に一度の大雨」に想定が引き上げられた。水害の激甚化で都道府県による対象河川の指定も増えており、現在の区域内人口はさらに増えている可能性が高い。

 水害対策を巡っては戦後、公共事業でダム貯水量や堤防延長が右肩上がりで伸びる一方、宅地などの浸水面積は1980年代後半からほぼ横ばいで減っていない、とのデータもある。政府は追加経済対策に国土強靱化を盛り込み、巨額の公共事業費を投じる構えだが、財務省内には「ハード整備だけでは限界で、危険な場所に住まないという発想の転換が必要だ」との指摘がある。

 財務省は水害被害が想定されていない地域への居住を促すため、住宅金融支援機構の住宅ローン「フラット35」の金利や民間保険会社の保険料に関し、水害リスクで差を設けられるかどうか、金融庁と協議に入った。建築や開発を規制できる土砂災害特別警戒区域のように「水害に関する土地利用規制にも踏み込むべきだ」と本格的な検討を求める声も出ている。

 (中野雄策)

【洪水浸水想定区域】洪水の恐れがある場合に住民の避難を促し、被害を最小限に食い止めるため、国や都道府県が河川ごとに浸水が想定されるエリアを指定する。2001年度に導入され、20年1月時点で国管理の448河川、都道府県管理の1644河川が対象になっている。想定される水深や浸水継続時間も公表され、市町村はこれらの情報を基に洪水ハザードマップを作成する。

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