「九州のために」宿願成就に大人の判断も 福岡・高島市政10年

西日本新聞 社会面 塩入 雄一郎

 11月27日、福岡市長・高島宗一郎は多忙を極める「時の人」とオンラインで初対談に臨んだ。マスクの在庫管理など新型コロナウイルス対策で一躍、世界の脚光を浴びた台湾のデジタル担当相・唐鳳(オードリー・タン)だ。

 46歳の高島は民放アナウンサー、39歳のタンはプログラマーと、共に民間出身。ベンチャー企業支援など力を入れる政策にも共通点がある。2人はすぐに意気投合。タンが、台湾で実施している若手人材の登用制度を紹介すると、高島は絶賛し「日本でも取り入れたい」と興奮気味に返した。

 市長就任以来、地方の首長としては「異次元」(市幹部)なほど多くの海外要人と交流してきた高島。2017、18年にはスイスの世界経済フォーラム(WEF)年次総会(ダボス会議)に異例の政府関係者枠として招待され、2者会談を積極的に行った。

 高島の看板政策の一つで、菅政権もモデルにした「はんこレス」は、世界に先駆けて「電子政府」を実現したエストニアの首相ユリ・ラタスと18年のダボス会議で会談したのをきっかけに着想した。

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 「1期目は地盤固め。2期目で福岡市を完璧にし、3期目は九州のために頑張る」。市政報告会など公の場で、高島がこう語る場面が目立ってきた。

 増え続けているとはいえ市の人口は160万人。グローバルな都市間競争が激化する中、地理的に近い中国の上海や広州など1千万人超の「メガシティー」に市単独で勝つのは困難だ。

 国や街づくりの海外トップランナーから刺激を受け、世界と渡り合う上で福岡市の弱点は「規模」と感じてきた高島には、温めてきた構想がある。

 「九州7県の自治体が『ひとつ』にまとまり海外セールスを展開する」。九州全体なら人口は広州に迫る約1300万人。海外にも観光名所として知られる大分県別府市の市長・長野恭紘も高島構想に賛同する。

 高島は民放時代、九州・山口を網羅した朝の情報番組に出ていたこともあり、九州への思い入れは人一倍強い。「全119市を束ねる『九州市長会』会長を目指すべきだ」。高島に近いある首長は、構想実現に向けエールを送る。

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 福岡への国際金融センター誘致を目指す産学官連携組織「チーム福岡」。9月29日の結成に当たり、経済界への呼び掛けなど中心的役割を果たした高島には、ある変化が起きていた。同月2日に福岡市であった式典で、同席した県知事・小川洋に直接「入りませんか」とチーム福岡の副会長就任を要請したのだ。

 高島は昨春の県知事選で、現職の小川ではなく新人候補を応援。宿泊税導入や子ども医療費助成制度などを巡り対立もしてきた。「これまでの市長なら考えられないこと」(市関係者)

 高島自身は「最初から『オール福岡』がいいと思った」と、小川を誘った理由に他意はないことを強調する。だが、周辺は「九州をまとめるという宿願成就には知事の協力が絶対に必要。大人の判断をしたのでは」と真意を推し量る。

 信条の「尖(とが)り」とは相いれないようにも映る。しかし、自著で「選挙に強い政治家」になるため「顔を覚えてもらえるアナウンサーを目指した」と明かしたように、目的達成への最短手段を取ろうとするのもまた「高島流」だ。

 就任10年の節目となった今月7日の記者会見。高島はうわさされる国政転出を「2万パーセントない」と笑って否定したが、九州への「野心」は隠さなかった。「福岡からより視界を広げていきたい」「九州でもっと力を合わせたい」

 次期市長選は2年後。血気盛んな政治家が見据えるゴールはまだ先にあるのかもしれない。(敬称略)

(塩入雄一郎)

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