「ガチンコでやる」「もう引けない」自民一本化なるか、衆院福岡5区

西日本新聞 社会面 黒石 規之

【福岡コンフィデンシャル】

 自民党選挙対策委員長の山口泰明は11月25日、名古屋市のホテルで、党福岡県連重鎮で常任相談役の蔵内勇夫、幹事長の松尾統章と向き合った。面会の目的は、次の衆院選で自民分裂の可能性が出ている福岡5区。山口は「公認は現職優先です」と告げ、こう念を押した。「菅総理とも話をしてますから」

 福岡5区に自民県議の栗原渉(55)が出馬の意向を表明して約2カ月。党本部が、現職で前環境相の原田義昭(76)を原則通り公認する方針は揺るがない。

 蔵内は、党地域支部の多くが栗原を推しており、自民分裂のまま選挙戦に突入すれば共倒れになる懸念を説明。「党員投票で決めるしかない」と迫ったが、山口は「地元で話し合ってほしい」と折り合わない。蔵内は「じゃ党本部でいい知恵を出してください」とボールを投げ返した。

   ◇   ◇

 栗原を推薦する党県議団が望みを託す党員投票。「地元の声」を示すことで反転攻勢につなげる戦略だが、ここに来て、雲行きが怪しくなってきた。

 「仕掛けてきたのはそっちだろうが」。原田が所属する麻生派会長の副総理兼財務相、麻生太郎は10月24日、福岡市のホテルに集まった県連執行部の県議たちに怒りをぶつけた。

 会談の数時間後に別のホテルであった麻生の政治資金パーティーでは、司会者が来場した原田を紹介。麻生周辺は「こっちはガチンコでやってもいいんだ」と対決姿勢をあらわにする。

 県連は、党員投票を年内にも実施したい考えだったが、麻生の反発は予想を上回っていた。麻生側近は「じゃ、県議選でも出たいという新人が出たら党員投票するか?」と圧力をかける。

 さらに党本部も、公認の推薦者を地方組織が党員投票で決める前例ができれば、現職への「反乱」が各地に飛び火してしまうことを警戒。党選対関係者は「党の規約になく、関知しない。結果を持ってきても中身も見ないだろう」とにべもない。

 党員投票は、麻生との亀裂を深める上、結果が反映される可能性も低い。県連関係者は「いつでもできるように準備は整えている」と話すが、実施のめどは立っていない。

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 栗原は、地盤の朝倉市で県政報告会を重ねつつ、大野城市や春日市など大票田の筑紫地区での活動も拡大。地元の県議や市議の付き添いで企業や団体回りを精力的にこなし、「応援してくれる人も増えて、もう引けない状況」(県議)。周囲に「無所属でも勝負する」と明言している。

 一方、原田は麻生や党本部がつくった流れを刺激しないよう注意を払い、支援者回りなどで粛々と選挙戦に備える。県連が11月15日に原田と栗原に呼び掛けて開いた直接協議も、原田は騒ぎにならないよう「マスコミに非公開」を条件とした。原田の関係者は「もう『現職優先』で決まっている。何も焦る必要はない」と話す。

 菅政権発足直後に吹いた「解散風」は、収束しつつある。「解散が半年後になると、今動いてもその時は状況は変わってるから」と県連幹部。福岡5区は、2カ月前とは打って変わって奇妙な静寂に包まれている。

(敬称略)

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