「夢みたい」障害ある子も一緒に遊べる公園 きっかけは都議の訴え

西日本新聞 くらし面 新西 ましほ

 障害のある子もない子も、誰でも一緒に楽しめる遊具のある公園が注目されている。東京都が2年前に整備に乗り出し、都内の各区でも導入が始まった。関係者は「全国にこの動きが広がり、公園の標準になってほしい」と期待を込める。

 東京都世田谷区の都立砧(きぬた)公園内に今年3月にオープンした遊び場「みんなのひろば」。地面は衝撃を吸収するゴムチップで舗装され、転倒してもけがしにくい。九つある遊具もさまざまな工夫が凝らされている。

 ジェットコースターの座席のような椅子型や2~3人が乗れる円盤型のブランコは体を支える力が弱い子も楽しめる。車椅子や歩行器のまま複合遊具に上がれる幅広いスロープがあったり、目や耳が不自由な子も音や感触を楽しめたり。騒がしい場所が苦手な特性のある子ども向けに切り株型のシェルターもある。

 重い障害で車椅子に乗る近くの友岡寿音(じゅの)さん(10)は何年も公園から遠ざかっていたという。母の宏江さん(40)は「ここでは親の手助けなしで友達と一緒に滑り台やブランコを楽しめる。夢みたい」と喜ぶ。

 誰もが遊べる公園づくりに取り組む「みーんなの公園プロジェクト」(岡山市)によると、誰にでも利用しやすいよう工夫されたユニバーサルデザイン(UD)の遊び場は1990年代以降、欧米で広がり、近年は台湾やシンガポールでも開設されているが、日本ではまだごくわずかだ。2006年施行のバリアフリー新法は公園に多機能トイレの整備などを定めたが、遊具については手つかずだ。

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 都が整備する契機となったのは、ダウン症の息子を育てる都議の龍円愛梨さん(43)の訴えだ。

 龍円さんは7年前、米国で出産。自宅近くに「インクルーシブ・プレイグラウンド(包括的な遊び場)」と呼ばれる公園があった。ゴムチップで舗装した地面は歩行が困難な息子もにじり歩きできた。背もたれのあるブランコも楽しめた。

 子どもが2歳の時に帰国した。日本にそんな公園はない。「土の地面をはって服はボロボロになるし、滑り台は階段が急で幅が狭く上れない。公園は誰もが遊べる場所のはずなのに」。龍円さんは17年、誰もが遊べる「インクルーシブ公園の整備」を公約に掲げて都議選に立候補し、初当選した。当選後、龍円さんの提案を受けた都の担当者たちは「考えたこともなかったが、重要な視点だ」とすぐ検討を始めたという。

 都は18年、障害児の保護者や支援団体、公園づくりの専門家に意見を聞き、海外の施設を視察するなどして整備に着手。第1弾として3月に「みんなのひろば」が完成し、来秋には府中の森公園(府中市)が続く。今後はノウハウを全国へ提供するために指針を策定。都内の市区町村向けの補助金も創設する予定だ。

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 こうした動きは都内の自治体にも広がりつつある。豊島区は今年9月に開設した公園「としまキッズパーク」に車椅子に乗ったまま楽しめる砂場や親子で乗れるベンチ型のブランコなどを整備した。品川区も障害児の意見などを基に、車椅子対応の遊具のほか、順番待ちが苦手な特性のある子が遊びながら待てる仕掛けなどを導入する計画だ。神奈川県内でも市民団体が要望活動を始めた。

 「作り手側は利用者の声を聞かず、障害児の保護者たちも仕方ないと諦めて声を上げなかった」。日本でUDの遊び場の整備が遅れた理由を元特別支援学校教諭で「みーんなの公園プロジェクト」発起人の矢藤洋子さんはそう語る。

 「みんなのひろば」では利用者や近隣住民への聞き取り調査を実施中だ。都公園協会と連携して調査を行う一般社団法人「TOKYO PLAY」によると、一般の利用者側からは「障害者との関わり方が分からない」、障害者側からは「周囲に障害への理解がなく、行くこと自体難しい」などの声が寄せられているという。「お互いを知り、同じ場所で遊ぶ仲間だと思うことが第一歩だ」(同法人)

 遊具の整備費用も課題だ。都によると、UDの遊具の価格は通常の2~3倍。ゴムチップ舗装も割高だ。米田剛行・公園建設課長は「UDの遊具が当然のこととして普及すれば、価格も下がるはず」と期待する。

 みーんなの公園プロジェクト代表を務める柳田宏治・倉敷芸術科学大学教授は「遊具を置いて完成ではない。利用者の意識も含めて本当に空間全体がみんなが楽しめる遊び場になっているか。対話を重ねて改善を図っていくことが重要だ」と指摘する。 (新西ましほ)

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