協力隊員、赤村で起業 「地元米」活用 “つかず離れず”村支援奏功

 福岡県赤村で「地域おこし協力隊」を経験した若者が、村の主産業の米をキーワードに起業する動きが相次いでいる。少子高齢化や人口減少に悩む村で、なぜ彼らはあえて残って新たな道に挑むのか。そこには、住民が自覚すらしていない、村が持ついくつかの隠れた魅力があった。

 「ちょっと熱いけど、全力で混ぜて」

 5日、大明侑真さん(27)は、地元の児童や保護者ら20人ほどを集めて、自宅の納屋を改装した作業所で“みそ蔵開き”を行った。ふかした地元産米15キロにこうじ菌をみんなで混ぜた。赤小3年の井上仁さん(8)は「みんなで混ぜるのって楽しい」と笑顔だった。

 大明さんは鹿児島市出身。大学受験に失敗しアルバイトを転々。3年前、職を探している時、自然の豊かさにひかれ、赤村の協力隊員に応募。村の温泉・宿泊施設「源じいの森」の男性料理長に付いて調理などの補助業務に汗を流した。飲食業に興味を持ち調理師免許も取った。

 飲食店開業の夢を描き始めた頃、新型コロナウイルスの影響が村を直撃する。「源じいの森」の直営レストランが今年3月に閉鎖。料理長も村を離れた。飲食業への不安を抱いたが、食への関心は高かったので、おいしいと評判の地元米にこだわったみそ造りに着目する。

 村でみそ製造所を長年営む道寿子さん(74)の指導を仰ぎ、製造法を一から学んだ。新品なら120万円はするみそ発酵器は、村の紹介でみやこ町のみそ製造組合から無償で譲ってもらい、起業のめどがついた。

 なぜ赤村なのか-。「よそ者にここまでしてくれる村が心底好きになった」。12月いっぱいで任期が終われば、地元産原料にこだわったみそ製造へ突き進む。

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 今年3月まで、協力隊として農産加工品の開発に取り組んでいた長瀬加菜さん(41)は村内で起業し、赤産米を加工した無農薬米粉を販売している。村の魅力として「自然いっぱいなのにちょっと足を伸ばせば福岡や北九州に行ける」と地理的優位性を挙げる。自然や農業は好きだが、たまには都会の空気も吸いたくなるという愛知県出身の長瀬さん。「ちょうど良い田舎感と、うっとうしいこともあるけどありがたい人情が心地いい」と語る。

 つかず離れず面倒を見てくれる役場の存在も大きい。協力隊当時、村から「地場米の高付加価値化」という大枠の目標を指示されたが、あとは自主性を重んじてくれた。村向けに有機米を使った土産品を開発しつつ、地元にこだわった米粉を企画する時間もあったという。「干渉しすぎず、でも困った時はすぐに手を差し伸べてくれた」

 現在、生活のために村内の農業関連の会社でも働いているが、米粉の販売が軌道に乗りつつあるので、今後、会社の勤務をアルバイトに切り替え、米粉加工品の製造販売で自立する道を探っていく。

 徳島大大学院の田口太郎准教授(地域計画学)は「隊員を放置したり、逆に束縛しすぎたりして関係を悪化させている自治体は多い。適度に干渉しつつ自主性の芽を伸ばしながら隊員の力を地域へ還元させようとする村のやり方は、一つの有効な方法ではないか」と話した。 (吉川文敬)

 地域おこし協力隊 総務省が2009年に始めた、若年層を中心に地方に移住し、活性化に取り組む制度。活動期間はおおむね1年以上3年以下で、人件費などは国が負担する。隊員数は年々増加し18年度は全国で5千人超が活動する。人口が1950年の4970人をピークに減少し、11月末現在で3072人の赤村では、外部の若者の力を借りて活性化を図ろうと3年前から計8人を受け入れている。

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