外国人実習生 コロナ苦境に支援拡充を

 制度の趣旨は形骸化してしまい、安価な労働力として扱われてきた。そこに新型コロナウイルス感染が広がり、異国での生活は一段と苦しくなっている。

 日本で暮らす外国人技能実習生たちのことだ。政府はそうした境遇に改めて目を向け、支援の手を広げるべきだ。

 コロナ禍による不況で実習先を失い、「転職」を余儀なくされたり、国境閉鎖で帰国できず孤立状態に陥ったりする彼らの姿が相次ぎ報じられている。

 最近では、北関東で家畜や果物が大量に盗まれる被害が続発し、ベトナム人グループが逮捕された。報道によると、多くは日本各地で働いていた実習生で「コロナで仕事がなくなった」「入国時の借金の返済に困った」などと話しているという。

 東京や関西では在留カードの偽造などの疑いで中国人の元実習生らが摘発された。失業したまま在留期限が切れれば不法滞在で収監される。それを恐れる外国人に目を付けた密売組織が存在するとみられている。

 外国人労働者を支援する市民グループなどは現状を深刻と見ており、政府に実態調査を進めるよう訴えている。政府も真剣に受け止め、応えるべきだ。

 出入国在留管理庁(入管庁)によると、受け入れ企業で実習が中止され、解雇された実習生は4129人(10月16日現在)に上る。うち約1300人は同業種の別の実習先に移ったが、受け入れ先が見つからないケースが目立ち、約1200人が本来の実習業種とは異なる分野の仕事に「転職」している。

 これは政府が導入した救済策の一つで、農業や建設業など14分野での就労を特別に認める措置だ。ただ実習制度を一層形骸化させる面もある。実習生は人手不足の産業に広く振り分けられる形になり、日本の技術を習得するという制度の趣旨はますますかすんでしまうからだ。

 政府は昨年、新たな在留資格特定技能」を設け、外国人の受け入れ枠を拡大した。それに伴い、入管庁や厚生労働省などが連携して在留者の暮らしを支える態勢を組んではいる。しかし、コロナ感染に関する情報伝達の遅滞、通訳不足による相談体制の弱さなどが指摘され、とても十分とは言えない。

 実習生の失踪も減少傾向にはあるが、今年上半期で3253人に上る。長時間労働の強要、賃金の不払いといった問題がなお横たわるとみられる。この実態も詳しく調査すべきだ。

 「多文化共生社会」の掛け声と現実との落差は大きい。それを埋めていくには、外国人の支援拡充と併せて諸制度の在り方を再考することも必要だ。政府にはそれを強く求めたい。

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