ネットで議論、練り上げた「未来」 高校生がリーダー養成塾で挑戦

西日本新聞 くらし面 四宮 淳平

「コロナ禍の子」(8)対話

 「withコロナ」の暮らしに伴う課題をどういう形で解決できるのか-。福岡市博多区の福岡高2年緒方瑠南(るな)さん(17)は今夏、全国各地の高校生21人とオンラインで意見交換し、アイデアを練った。

 「これまでのように対面での教育を受けられない」「客が来ずにもうけが減って経済的に困窮する人がいる」「正確な情報を得ようにも国や世代で情報格差が生じている」…。

 さまざまな意見が出る中、解決策として浮上したのが、仮想空間で自身の分身(アバター)を動かして交流する案。3密を回避しつつ、「会えない」ストレスを解消する狙いがあった。

 ただ、方向性は決まっても細かな制度設計はなかなか定まらず、疑問が噴出した。「仮想空間が快適だと、現実逃避してしまう人が現れかねない」「どこまでリアリティーを求めた方がいいのかな」

 テレビ会議システムでは、2人以上の人が同時に話すことは難しかった。「実際に集まっていれば、発言を聞きながら隣同士で話もできるのに」。緒方さんはもどかしさを感じつつ、議論に集中した。

 22人は世界を舞台に活躍する人材を育てる「日本の次世代リーダー養成塾」の参加者たち。緒方さんは、養成塾のスタッフ経験がある父から話を聞き、「高校生になったら参加したい」と思っていた。

 募集要項が発表されると、自らの長所や短所、気になる国際ニュースなどを文書にまとめて3月に応募した。

 養成塾は例年、夏休み中の2週間、福岡県宗像市に集まり、寝食を共にしながら、昼夜問わず意見を交わす。応募した時点では今年も同様に開催予定だったが、新型コロナの影響でオンラインに切り替わった。

 緒方さんは残念に感じつつも、貴重な機会に変わりはないと思い直した。迎えた初日の8月8日。21都道府県から参加した174人が、各自のパソコンやタブレットでつながった。

 昼間は知事や大学学長、会社社長の講義を受けた。

 ニュースでは見聞きしていなかった米中関係の舞台裏を知り、男性中心とされる社会で女性が活躍することの難しさを教わった。冤罪(えんざい)被害者にさせられた心境にも触れることができた。

 学校の授業とは異なる視点が新鮮で、言葉には説得力があった。「人生において大切なこと」を学んだ気がした。

 夕方には8グループに分かれ、各グループはテレビ会議システムでつながった。慣れない形での意見交換に、最初はみんな戸惑い気味で、口数は少なく話題は広がらなかった。

 それでも、世話役の社会人と養成塾卒業生のリードで、会話は徐々に盛り上がった。参加者の話し始めがかぶるという問題点は、テレビ会議システムの「挙手」のボタンを押し、指名されてから発言することで解決した。

 8月の平日と週末、9月の週末と断続的に講義を受け、話し合いを続けた。休み時間にもオンラインでつながり続け、雑談をしたり食事をしたりして、コミュニケーションを図った。

 12日目の9月21日。緒方さんはグループを代表し、メンバー4人と一緒に発表した。手分けして作り上げた23枚のスライドを順々に表示していった。

 基本理念は「密だけどっ! 全員集合っっ!!」。仮想空間で、アバターが五感を使いながら運動や会話を楽しみ、各国の言語が自動翻訳される中で起業や投資が学べるという「理想の世界」だった。

 学校の授業や部活、塾で一日が過ぎていく日常では得られなかった体験。それぞれ異なる22人の考えを一つに集約していく難しさに触れると同時に、意見を述べる大切さを感じた。

 起業や国際分野での仕事など、目標を堂々と語る同世代の姿も刺激的だった。「自分も何か思いきったことがやりたい」。今はまだ漠然としているけれども、将来を眺める視野は随分と広がった。(編集委員・四宮淳平)

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