GOTO停止 医療崩壊阻止が最優先だ

 新型コロナウイルス感染が急拡大し、重症者や死者の増加が止まらない。医療現場も逼迫(ひっぱく)している。国民の健康、命を守るためには当然の判断だ。むしろ遅すぎたと言えよう。

 政府は観光支援事業「Go To トラベル」を28日から来年1月11日まで全都道府県で一時停止する。菅義偉首相がようやく決断した。

 札幌、大阪両市に加え、新規感染者数が高止まりしている東京都と名古屋市が目的地である旅行は先行除外する。出発地とする旅行も自粛を求めている。

 感染者が比較的少ない九州の観光地などには戸惑いや不満もあろう。菅首相はトラベル事業が感染拡大の主要な原因である証拠はないとしている。

 ただ人の移動が感染リスクを高めることは専門家も指摘している。公費で旅行や飲食を促進する「GoTo」事業を続ける一方で国民に広く感染対策を求めるのは分かりにくい。

 観光業界の苦境は確かに看過できないが、トラベル事業の恩恵は一部の観光地や高級ホテルなどに限られているとの分析もある。ここで感染者減に転じなければ、経済への影響はさらに甚大となり、何よりも失われる命が増えかねない。

 それでも政策の急ブレーキには違いない。関係業界には混乱も広がっており、その収拾に政府はまず注力すべきだろう。

 政府は先月下旬に「勝負の3週間」と銘打ち、国民に対策強化を求めた。その後も感染拡大は続き、政府の対策分科会は再三「GoTo」事業見直しを求めた。尾身茂会長が国会で「GoToは不要不急」と語り政府の決断を迫る一幕もあった。

 こうした専門家や医療現場の強い危機感に政府が適切に反応したとは言い難い。各種世論調査で政府のコロナ対策に強い批判が示され、経済重視の菅政権もさすがに重い腰を上げざるを得なくなったのが実情だろう。

 政府が今、最優先すべきは、医療崩壊を防ぐことだ。感染拡大した地域の医療現場から「もう限界」という悲鳴が広がり、疲弊した看護師の離職も始まっている。新型コロナ以外の外来診療や手術の停止に追い込まれる地域もある。感染拡大地の医療は緊急事態に至っていると考えるべきだ。

 政府は感染患者を受け入れる病院などへの補助金を倍増するという。医療従事者の待遇改善や元看護師の復帰支援の拡充も欠かせない。課題は山積みだ。

 今回の事業停止は泥縄で決まった。仮に1月11日以降の状況改善が見込めるとなったら、政府はどういう目安で再開するのか。事前の開かれた検討作業こそ、信頼回復の第一歩だ。

PR

社説 アクセスランキング

PR