コロナ乗り越え涙の昇格 アビスパ前寛之主将「全員でつかみとった」

 涙で言葉を詰まらせた。5年ぶりのJ1昇格を達成したアビスパ福岡の主将を務めた前寛之選手(25)は「全員でつかみとった昇格」と実感を込めた。移籍1年目。「J1に昇格するために福岡に来た」。重荷が下りた安堵(あんど)感も浮かんだ。

 8月2日の大宮戦の直前、新型コロナウイルス感染の可能性が高いことが伝えられた。キックオフ約2時間前に試合は中止。その後、正式にPCR検査の結果が陽性と判定された。

 J2は2月末の開幕戦後にコロナの影響で中断。6月末に再開し、3位と好位置に付けていた。昨季まで長谷部茂利監督が率いた水戸に在籍。ともに福岡に移り、主将を託された。監督の戦術を深く知る今季のチームに欠かせない存在。誠実な人柄、ストイックな姿勢は誰もが認めるだけに感染はチームにとってもショッキングな出来事だった。

 「家族に子どもがいる選手、スタッフもいる。迷惑をかけたと考える時間が多かった」。前主将の離脱後、3連敗を喫するなどチームは低迷。思い悩む主将を支えたのは仲間たちだった。「必要以上に責任を感じず、元気にプレーしてもらえるように、みんなが励ましのメッセージを送ってきた」。編成責任者としてチームを見つめてきた柳田伸明強化部長が振り返る。

 今季ワーストの17位まで順位を落とした9月5日の山口戦で復帰。攻守の起点となるボランチが戻ってきたアビスパはよみがえった。2-0で勝利すると、ここからクラブ最長の12連勝。一時は首位に躍り出た。

 昨年は16位に沈んだクラブを1年でJ1に押し上げた。「変えないと、という思いから強めの発言をしたこともあった」。選手を集めてミーティングを開き、本音を言い合える環境をつくった。感染後も「Jリーグでは定期的なPCR検査を実施している。そのたびに不安になる」と心理的な重荷を抱えながら戦い抜いた。

 過去3度の昇格はいずれも1年でJ2に降格した。「自信を持って戦いたい」。新天地で主将の重圧を背負い、困難に打ち勝った主将は誓った。

 (松田達也)

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