誰もが見やすいカラーとは さまざまな色覚に配慮 九大案内図で実践

西日本新聞 くらし面 三宅 大介

 色覚に障害のある人もない人も見やすいように-。九州大伊都キャンパス(福岡市西区)内に設置されたカラーの案内図が、今年の日本サインデザイン賞(SDA賞)に入選し、九州地区賞を受賞した。学内の教職員らでつくる「九州大学キャンパスバリアフリー検討研究会」が、識別できる色が少ない人に配慮してデザインした。“逆転の発想”で配色したという新たな手法とは。

 建物は薄紫、緑地は黄緑、敷地は薄い灰色…。キャンパス中心部の椎木講堂近くに、その案内図はある。

 新しい配色を手掛けたのは、研究会メンバーで九大大学院芸術工学研究院教授(色彩・視覚科学)の須長正治さん(55)や、学内のバリアフリー活動に取り組む学生たちだ。

境目分かりやすく

 大多数の人は光の三原色といわれる赤、青、緑の光を受け取ることができる「3色覚」で、多くの色を識別する。一方、色覚に障害のある人のほとんどは赤と青、または青と緑の光のみを受け取る「2色覚」とされ、識別できるのは青や黄、灰色などに限られる。

 赤と緑は暗い黄色、ピンクは灰色などに見え、3色覚では薄紫、ピンク、青と異なって見える色も同じ水色と認識する。例えば建物をピンク、緑地は緑、敷地を灰色にした案内図は、全体が暗い黄緑や灰色になり、建物と敷地の境目も分かりにくい=写真(1)

(1)【従来のカラーデザイン】3色覚向けの案内図(上)を2色覚(下)で見ると印象が暗く、境目も分かりにくい=提供写真

 須長さんによると、これまで色のバリアフリーの試みは「3色覚でデザインされたものを2色覚で認識できるよう補正する」作業。「色を置き換える労力は大きく、正確性にも欠ける難点があった」という。

 発想を改め、今回は「最初に2色覚で見やすい案内図を作成し、後で3色覚向けに彩色した」のが特徴。いわば「少数派ファースト」の案内図を目指した。

「色見本」を参考に

 須長さんの研究室は、まず学内外から色覚障害のある人を募り、認識できる色や微妙な差をヒアリング。(1)2色覚で見分けられる色(2)3色覚で識別できても、2色覚には同じ色に見える混同色-を集約した「色見本」を作成した。見本があれば「2色覚を基点としたバリアフリーのデザイン」が容易となり、実用化につなげられるからだ。

 今回の案内図も色見本に従い、まず建物を青、緑地は黄-と2色覚ではっきり識別できるよう配色。緑地は黄緑など「3色覚になじみのある色」に変えていった=写真(2)。文字も多くの人が読みやすいよう考案した書体を用いて完成させ、今年3月に設置した。

(2)【新しいデザイン】まず2色覚で見やすい配色(下)にし、色見本に従って3色覚になじむ彩色(上)にした=提供写真

 SDA賞は1966年以来、日本サインデザイン協会が主催する国内唯一のサインデザインの顕彰制度で、研究会事務局の特任助教、羽野暁(さとし)さん(43)は「変えてあげる、ではなく、見分けられない人を主眼にデザインする考え方が評価されたのでは」と語る。

 キャンパス内のほかの案内図も随時、更新期に合わせて変更していく方針だ。

教材にも生かして

 配色の試行には九大の「障害者支援ピア・サポーター」の学生たちが関わった。今後は2色覚を基点とした配色マニュアルを教職員向けに作成していく。

 「黒板の赤字が分かりづらい高校の先生など、周りに結構、色覚障害の人がいた」という芸術工学部3年の川波花音(かのん)さん(20)。「教材や資料にはどんな配色がいいかなどを例示できたら。2色覚の人がどう見えているのか配慮できる人が増えてほしい」と願う。 (編集委員・三宅大介)

 【ワードBOX】色覚障害
 主に、視細胞の一種で赤、青、緑の光をそれぞれ受け取る錐体(すいたい)細胞の一部が機能しないことに起因する。日本では男性の5%、女性の0.2%程度。2000年代初頭、路線を色分けして案内している都内の地下鉄で配慮不足が指摘されたことを機に、標識や教材の「色のバリアフリー」を目指す試みが各地で本格化している。

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