「安倍切り」もろ刃の剣 党内の反発強まる恐れも

 「桜を見る会」前夜の夕食会の費用補填(ほてん)疑惑を巡り、菅義偉政権が安倍晋三前首相を国会招致する調整に入ったことが永田町を揺るがしている。一国のトップが国会で虚偽答弁を繰り返した疑いがあるだけに「招致は当然」との受け止めがある半面、安倍氏周辺からは「菅義偉首相による『安倍切り』だ」との反発も。支持率の急落に見舞われる首相は、対応を誤れば身内の自民党内から矢を放たれ、自身を窮地に陥れかねない。 

 「丁寧に説明したいという前首相の意思の前提で、(安倍氏を招致する)閉会中審査が開かれる」。自民の下村博文政調会長は18日、安倍氏自身が国会出席を希望したとのストーリーを記者団に強調した。慎重な言い回しに、親密な安倍氏を傷つけまいとする配慮がにじんだ。

 実際に、安倍氏は招致を渋ることなく承諾したもようだ。

 複数の関係者によると、首相サイドが安倍氏に国会出席を打診したのは今週初めのこと。中堅議員は「政府や党に迷惑を掛けている以上、(安倍氏としては)断れなかった」とみる。

 ただ、打診したタイミングは、新型コロナウイルスの感染急拡大で首相の対応に批判が高まり、内閣支持率が急落したのと重なる。

 「自分への逆風をかわすために、官房長官として7年8カ月仕えた前首相を『さらし者』にしようとしているんだ」-。安倍氏の出身派閥で党内最大の細田派議員はこう読み、首相への不信を隠そうとしない。

 そもそも、東京地検特捜部が安倍氏の事情聴取に向けて歩を進めていることに、安倍氏の取り巻きは憤っている。政府や与党の要人にまつわる重大捜査の経過は、官邸や党中枢に報告が上げられるとされる。首相や二階俊博幹事長は安倍氏を追い込む捜査を「黙認」しているのではないか、との臆測が成長していく。

 「これは、首相、二階氏VS安倍氏の権力闘争なんだよ」。細田派関係者は、こう解説してみせた。

 9月の総裁選で、二階派や細田派など同床異夢の5派閥に担がれる形で勝利した無派閥の首相。党内基盤が心もとないため、キングメーカーとなった二階氏と表裏一体を貫くしかない。

 かたや、安倍氏は退陣劇の原因となった体調が回復に向かい、細田派復帰と「総理への再々登板」を待望する声も強まりつつあった。麻生太郎副総理兼財務相との盟友関係も健在で、このままだとやがて、二つの流れがぶつかるのは避けられないとの見方も出ていた。

 細田派の参院議員は「これ以上、安倍切りがエスカレートすれば、われわれも黙っていない」と首相サイドをけん制する。野党は一問一答形式が原則で、丁々発止の攻防となる予算委員会への安倍氏招致を要求している。自民内では、追加質問がないことの多い議院運営委員会に招致する案が検討されている。 (東京支社取材班)

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