本を媒介に人との出会い ネット古書販売「こはく堂」店主・堀さん

 2017年4月にUターンした古里、長崎県平戸市大久保町でインターネット販売主体の古書店を妻の美鈴さん(41)と営む。

 求道者のような風貌にたがわず、ここまでの道のりは平たんではなかった。地元の猶興館高から熊本県の看護学校に進み、佐世保市の病院で4年間、看護師として勤務。05年、音楽の道を志して上京した。

 看護師のアルバイトの傍ら、ライブハウスなどでフォークソングの弾き語りをする日々。やがて高校の同級生だった美鈴さんと結婚した。充実していたが、生き方を模索し続けた。世の中の流れを見定めながら、自営業を理想とし、10年に古書のネット販売を始めた。

 11年3月、長男誕生。好きな山下達郎さんの楽曲「蒼氓(そうぼう)」の一節から「琥珀(こはく)」と名付け、古書店の名前も「こはく堂」とした。その2日後、東日本大震災が発生。家族のことを考えると、東京暮らしに危うさを感じた。郷里に近い福岡市へ転居し、父親の他界と長男の小学校入学を機に帰郷した。

 「当時ちょうど、平戸にU・Iターンする同世代が増え、盛んに自由な活動をしていることが伝わっていた。絶好の潮時と思った」

 東京や福岡時代、商品の古書は業者から仕入れることが多かったが、平戸では個人宅へ出張しての買い取りがほとんど。売り主との会話や交流が増え、本にまつわる思い出話に感動を覚える。それをウェブ上の日記につづれば、そのぬくもりを求めて、また声が掛かる。知人らのイベントも積極的に手伝い、会場の一角に古書を並べて販売する。人が往来するところに、出会いの媒介となる本を置くという発想だ。

 「人とジョイントすることの面白みを知った。若い頃はあんなに出たかった古里が、今は心身ともになじんでいる。周囲の仲間たちと一緒に平戸を盛り上げたい」

 大上段に構えることなく、透徹したまなざしで語った。 (福田章)

私の好きな本

 どんなジャンルとも等距離ですが、東日本大震災以降、環境問題やナチュラルな生き方についての本に注目しています。東北のマザー・テレサと称される佐藤初女さんの「いのちの森の台所」は魂に響く名著です。同世代では坂口恭平さんの「0円ハウス」「自分の薬をつくる」が楽しく読めます。

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