「進むも地獄、引くも地獄」新人、自民“調停案”に重圧 衆院福岡5区

西日本新聞 一面

【福岡コンフィデンシャル】

 「皆さまと一緒に地域をつくる。その思いで選挙に向けてまい進する」。19日に福岡県大野城市であった自民党県議、栗原渉(55)の後援会発足式。出席者たちは、栗原のあいさつにもどかしい思いを募らせた。

 次期衆院選の福岡5区で、同じ自民の現職、原田義昭(76)との「ガチンコ勝負」への意気込みを語るとみられていたが、栗原は最後まで出馬について明言せず。数日前まで支援者たちに「出馬して戦う」と語っていただけに、出席者は肩すかしを食らった格好だ。ある地方議員は「選挙の先頭に立つ人として不安を感じた」と戸惑いを見せる。

 自民分裂選挙を避けたい党選対委員長の山口泰明は、11日に福岡市のホテルで県連幹部と会い、次期衆院選は原田を公認した上で、原田が栗原を後継指名するという案を提示。発足式では、栗原がこの「調停案」にどう対応するのか注目されていた。同僚県議は「選対委員長の調整で、原田さんに後継指名までさせた。党本部のプレッシャーは重い。出馬の意思はあっても気を使って言及できなかったのだろう」と、栗原の複雑な胸中を代弁する。

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 調停案は、公認の推薦者を決める党員投票も辞さない福岡県連に対し、現職への「反乱」が全国各地に飛び火することを警戒した山口が、首相菅義偉や原田が所属する麻生派会長で副総理の麻生太郎と膝をつき合わせて練り上げた。麻生は、原田に引退時期を明言させることに一時、難色を示したが、最後は原田に「次は栗原が望ましい」と言わせる案を受け入れた。

 原田は12日の記者会見で「次は栗原」と語ったが、「次」がいつなのか問われると「私は終生政治家として課題がある限り続ける」と発言。慌てた山口は15日に再び会見を開かせ、原田に「次期衆院選を政治生活の集大成にする。次の次の選挙は栗原さんを後継にする」と発言を修正させた。

 本部による異例のお膳立て。県連執行部の県議にとっても、麻生との対立を深めないぎりぎりの案で、党員投票を見送った。県連幹部は「予想以上のボールを投げてきた。これで栗原を説得できなければ、党本部に何も言えなくなる」と重く受け止める。

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 栗原の立場は複雑だ。支援者の中心は約90人に上る地元の自民県議や市町村議員。ある市議は「栗原が調停案をのんだら、俺たちもはしごを外される。次回応援しろと言われても熱が入らない」と話す。陣営の会議では「既に火が付いており、支援者を抑え込もうとすれば逆に油を注ぐ」という声もあり、引くに引けない状況という。

 後継発言への疑念も拭えない。栗原陣営は「本部から公認を約束されたわけではなく、あくまで『原田の後継』。空手形の恐れがある」。実際、麻生周辺には「今回は原田が公認を得て当選することが大事。『次の次』と言ったって、3年後には党本部も県連もみんな変わってるんだから」との声もある。

 とはいえ、無所属で出馬すれば調停案を練り上げた党本部と県連のみならず、菅や麻生の面目もつぶすことになる。麻生の側近は「栗原は自民党に弓を引いてるわけで、当選しても自民からは除名される。どの派閥も面倒見ないだろう」とけん制。ある県議は「われわれも組織人だから党の方針には従う」と話す。

 党本部と県議の重鎮を経て、返ってきたボールは今、栗原の手にある。栗原を推す市議はその胸中をおもんぱかる。「進むも地獄、引くも地獄。それなら進むしかない」 (敬称略)

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