どう活用?増える文系シニア 木下敏之氏 

◆50G問題

 福岡市は二つの大問題を抱えている。一つは九州の自治体で最下位の出生率だ。福岡市は全九州から若者を集めるが、その若者が結婚しにくく子供も産みにくい。もう一つが、仕事がないシニアが今後、大量発生する問題である。これを「50G(50歳以上の世代)問題」という。

 実は高齢者数の増加は日本の共通問題ではない。日本全体では65歳以上人口はほぼ横ばいになっている。福岡県内でもいわゆる「地方」は、65歳以上の減少が始まっている。

 社会保障・人口問題研究所の推計によると、福岡市の65歳以上人口は2015年の36万6千人が45年には52万5千人に増える。認知症リスクの高い85歳以上人口は4万3千人から12万1千人に激増する。福岡市は東京23区と並ぶ「高齢者数が2045年以降も増え続ける」数少ない自治体なのである。

 私は定期的にハローワークに調査に行っているが、50歳を過ぎると福岡市では安定した仕事は得られない。理系の人は60歳以降もこれまでの経験を活(い)かせる仕事があるが、文系の仕事は肉体労働も含め極端に少ない。給料を得られなくなったシニアの消費は減る。このことは商業都市福岡に深刻な影響を及ぼす。また、元気なシニアが仕事もなく家でゴロゴロしていると、病気がちになり、認知症にもなりやすい。医療費は増える。

 シニアの仕事がない原因は、多くの会社がシニアの雇用に消極的であることと、社員の能力を高めるための教育投資が少ないことである。OECD諸国の中で、日本は極端に人材投資費用の割合が少ないのだ。

 特に仕事が少ない文系シニア男子のセールスポイントは対人折衝能力なので、ホテルのフロントや営業でシニアを積極活用する企業もあった。しかし、新型コロナウイルスのまん延以降、接客の仕事は自動化されつつある。さらに新型コロナによる不況とIT化で、企業は50歳以上を対象に希望退職者を募り始めた。昨年からこの動きはあったが、新型コロナがこれを加速し、仕事のない50歳以上の文系シニア男子がさらに増える見込みだ。これが「50G問題」である。

 仕事のない50歳以上の文系シニア男子をどう活用するのか。どう再教育するのか。福岡市の政財界挙げて全力で取り組むべき深刻な課題である。

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 木下 敏之(きのした・としゆき)福岡大経済学部教授 1960年生まれ、佐賀市出身。佐賀市長(2期)などを経て現職。大学では九州経済論を担当。少子化対策や、50歳以上の文系シニア男子の就職問題などを研究している。

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