韓国の若者も熱視線、K演歌「トロット」 歌番組がきっかけで人気再燃

 韓国の音楽と言えばK-POPが世界的な人気だが、今年国内で熱い視線を集めたのが大衆歌謡「トロット」だ。「釜山港へ帰れ」など演歌のような曲調は長年、高齢者の音楽と見られてきたが、テレビの歌番組をきっかけに人気が再燃。50、60代を中心に若者にも浸透している。番組出演者が宣伝した商品は次々とヒットし、新型コロナウイルス禍で冷え込む韓国経済の活力にもなっている。

 釜山市の繁華街、西面。若者が行き来する大通りを歩くと、明るいテンポのトロットが時折流れてくる。若い女性たちが楽しそうに聞く姿も見える。

 ブームを定着させたのは、ケーブルテレビ局「テレビ朝鮮」が1~3月に放送した「明日はミスタートロット」。“歌の神童”と呼ばれる少年や元アイドル、現役軍人など約100人の男性が勝ち抜き方式で歌唱力を競い、頂点を目指す歌番組だ。

 従来は哀愁漂う曲調が多かったが、番組ではアップテンポでK-POPに近い歌や、派手なダンスを取り入れた出演者が登場。中にはテコンドーの技を披露しながら歌うパフォーマンスも見られた。レベルの高いショーが評判を呼び、7人が争った決勝は、生放送で実施された視聴者投票が約770万票に上った。最高視聴率は35・7%を記録した。釜山市の30代女性は「久しぶりに家族全員で話題にしながら見た」と話す。

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 決勝に出場した7人をはじめ、話題の出演者は人気が急騰。家電量販店や食品、金融などの広告モデルに続々と起用されている。韓国メディアによると、慶尚北道の酒造会社が人気出演者の名前を冠したマッコリを発売すると大ヒット。同社は増産のため新工場を建設した。

 番組の優勝者イム・ヨンウンさんも引っ張りだこだ。イムさんがCMに起用された自動車は売り上げが前月比で約5割上昇した。アパレル企業が出演動画を公開すると、着ていたシャツが5倍以上売れたという。

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 トロット人気をけん引しているのは「オーパル世代」と呼ばれる50、60代だ。スマートフォンを使いこなし、安定した経済力を背景に関心事への投資を惜しまないとされる。若者を主なターゲットとしたK-POPになじめない中、近年の新しいトロットを「自分たちの音楽」と捉えた側面があるようだ。インターネットにコミュニティーをつくり、活発に活動する熱狂的なオーパル世代のファンも少なくない。

 ファンたちは音楽配信サービスのランキングで、お気に入りの歌手を上位にするため、集中的に再生して応援する。イムさんが11月に出した新曲は、世界的な人気の男性グループBTS(防弾少年団)の曲などと競い、一時2位に入った。駅や大通りに応援広告を出したり、ユニホームを制作したりするファンもいる。

 釜山市の主婦車今姫(チャグンヒ)さん(55)は若手男性歌手チョ・ミョンソプさんのファン。歌の紹介動画を制作、ユーチューブに積極的に投稿する。「コロナで大変な1年だったが、彼のおかげで少女のような情熱を持て、つらくなかった。ファンは世界におり、日本でもブームが来る」と力を込めた。 (釜山・金田達依)

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