脇の「多汗症」に塗り薬 科研製薬、副作用少なく

西日本新聞 医療面 野津原 広中

 手のひらや足の裏などから多量の汗が出る病気「原発性局所多汗症(多汗症)」のうち、脇から発汗する「原発性腋窩(えきか)多汗症」の新薬ができた。多汗症の外用薬(塗り薬)としては国内で初めて薬事承認され、公的医療保険の対象となった。これまでは手術や注射、内服薬しかなく、副作用の少ない治療法が待たれていた。慢性的な症状に悩む患者には朗報となりそうだ。

 新薬は科研製薬(東京)が11月に販売開始した「エクロックゲル5%」。多汗症の汗は、神経伝達物質アセチルコリンが、エクリン汗腺の受容体を刺激することで出るとみられている。新薬は有効成分のソフピロニウム臭化物が、脇の下にある汗腺の受容体に結合、アセチルコリンによる刺激を阻害して発汗を防ぐ。

 原発性多汗症は原因不明で完治が難しい。従来の保険診療は、ボツリヌス菌毒素の脇への注射▽抗コリン薬の内服▽手のひらの発汗に関わる交感神経の一部を遮断する手術「胸腔(きょうくう)鏡下胸部交感神経遮断術(ETS)」だけだった。抗コリン薬は喉の渇き、ETSは他の場所から汗が出る代償性発汗の副作用がある。

 保険対象外の治療には、塩化アルミニウムを含む塗り薬▽電流を流した水に患部を浸すイオントフォレーシス-などがある。

 科研製薬によると、新薬は1日1回、継続的に脇の下に塗ることで発汗を抑えられる。今後、手のひらや足の裏の多汗症にも使えるようにできないか検討するという。副作用として前立腺肥大の排尿障害や、閉塞(へいそく)隅角緑内障が悪化する恐れがあり、該当者への投薬を禁じている。

 日本皮膚科学会で多汗症診療ガイドラインの策定に関わった藤本智子医師(東京)は「これまでなかった保険適用の外用薬を全国の医療機関で処方できるようになったことは画期的だ。従来の治療法より副作用が少なく医療関係者の関心は高い」と評価する。新薬発売を受けて来年、ガイドライン改訂に着手するという。 (野津原広中)

 ▼原発性局所多汗症 頭部や顔面、手のひら、足の裏、脇の下に過剰な発汗が起こる病気。書類をぬらしたり、電子機器を故障させたり、衣服に染みができたりと日常生活に支障を来すことがある。厚生労働省研究班の2009年度調査では、有病率は手のひら5.3%▽足の裏2.8%▽脇の下5.8%▽頭4.7%。医療機関への受診率は6.3%と低かった。

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