来年度予算案 コロナ便乗の放漫財政だ

 新型コロナウイルス感染拡大の収束が見通せない中、国民の命や暮らしを守り、日本経済の成長力を高め、高齢社会にも備える-。難しい条件が並ぶからこそ、政府の2021年度予算案は例年以上に大胆な取捨選択が求められていたはずだ。

 きのう閣議決定された一般会計の総額は106兆6千億円を超え、過去最大だった本年度当初予算を4兆円近く上回った。財源も借金頼みが加速し、将来世代への巨額なツケ回しがまたも繰り返された。

 中身を見ても、コロナ禍の緊急時を隠れみのにして膨らんだ面が目立つ。既に風前のともしびだった財政健全化の目標はもはや消失しかかっている。

 当初予算ベースでの過去最大はこれで9年連続だ。安倍晋三前政権時代に始まった歳出膨張に歯止めがかからなくなっている。来年の衆院総選挙を意識する与党からの歳出圧力も高まっており、放漫財政は「天井知らず」の様相だ。

 コロナ禍への対応は確かに重要だ。新規感染者の増加が止まらず、医療現場からは悲鳴が上がっている。運輸・旅行業者を支援するはずの「Go To トラベル」を巡る政府の判断に迷走が続き、関係業界には混乱も広がる。コロナ対策には十分な予算を確保すべきだ。

 ただ、政府の裁量で自由に使える予備費に5兆円もの巨費を計上するのは看過できない。緊急を要する支出があり得ることは理解できるが、これは年度当初予算である。後は政府に一任せよと言わんばかりの予算編成はあまりに国会軽視である。

 そもそも19兆円を超える本年度第3次補正予算案の目的はコロナ対応だったはずだ。にもかかわらず、脱炭素社会を目指す2兆円基金や大学の研究開発支援ファンドの創設など長期的な課題の事業が盛り込まれ、本来なら当初予算案への計上が筋である防災・減災や国土強靱(きょうじん)化の公共事業まで紛れ込んだ。

 この補正と来年度当初予算案は一体の「15カ月予算」として編成された経緯がある。事業費の一部を補正に切り分け、全体規模を小さく見せる工夫かもしれない。合算すれば歳出が異常に膨らんでいるのは明らかだ。緊急事態、異常事態という言葉で、財政規律の緩みをごまかしてはならない。

 財源は相変わらず国債の大量発行に頼る。来年度は一般会計総額の43・6%を借金で賄う計画だ。当初段階で40%を超えるのは7年ぶりで、景気回復が鈍ればさらに膨らむ恐れもある。

 国と地方を合わせた借金残高は来年度末に1200兆円を超える見通しだ。私たちも目を背けてはならない現実である。

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