「実際の障害見逃す恐れ」 水俣の医師、国水研の診断手法に懸念

 国立水俣病総合研究センター(国水研、熊本県水俣市)が11日、研究の進捗(しんちょく)状況を明らかにした客観的診断手法は、水俣病被害者救済法が国に求める住民健康調査に向け、脳磁計と磁気共鳴画像装置(MRI)の活用を目指す。ただ、水俣病の診察経験が豊富な医師は、メチル水銀による健康障害を広く調査するという法の趣旨に沿っていないと指摘。「調査の1次データは、医療機器による純粋・客観的なものである必要はなく、実際に存在する健康障害を大幅に見逃す恐れがある」と懸念する。

 国水研によると、脳磁計は水俣病による感覚障害の有無を調べ、MRIは運動失調の原因となる小脳の障害を判断。50~80代の認定患者42人を調べた結果、31人(73・8%)に感覚野や小脳の障害が確認された。今後、統計専門家などの意見を聞き、有効性を検証していくという。

 一方、長年水俣病を研究する協立クリニック(同市)の高岡滋院長(神経内科)は、救済法に規定された住民健康調査について「公衆衛生学の基本から考えて、自覚症状の問診や医師の診察を含め、より広範で継続的な疫学調査になるのは自明」と強調。公害健康被害補償法に基づき「77年判断条件」と呼ばれる国の基準に従い、患者を重症者に限定した反省の上に成立した救済法の趣旨に照らし、多くの被害者を救う調査の必要性を説く。

 特に問題視するのが、救済法の条文にない「客観的な診断手法の開発」だ。身体刺激に対する感覚を本人の主観に頼ることなく、脳の変化を観察しようとするもので、脳磁計とMRIを使用する研究自体に「意味はある」と理解は示す。

 ただ、被験者のうち7割にしか異常が検出できていない精度不足や、医療機器で計測されたデータのみで診断しようとする姿勢を踏まえ「客観性を盾にとることで、公衆衛生学に必要とされる調査を、事実上入り口で拒否している」と指摘。主観的な自覚症状も含め、汚染魚介の摂食状況や他原因の健康障害などの調査を多数例で実施することで、客観的に健康影響を解明することは可能という。

 水俣病の公式確認から64年。行政や民間によるメチル水銀中毒症の健康調査は国内外で実施され、手法は「ほぼ確立している」という高岡氏は「脳磁計は、実態解明の研究の主流からはほど遠く、救済法が求める健康調査にふさわしくない」と批判する。 (村田直隆)

 

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