「世上に鑑み…」古書店去りて

西日本新聞 社会面 小野 浩志

 ≪世上に鑑みて 10月末にて閉店いたしました。≫

 私が住む東京都世田谷区の商店街の一角、古書店のシャッターに一枚紙が張り出された。簡潔明瞭な文言に、潔さと揺るぎない意志を感じさせる。「世上」とはやはり、新型コロナウイルス禍か。

 確かに、「マスク着用」「店内滞在は30分以内で」と張り紙でお客に伝え、対策に腐心している様子だった。でもコロナは引き金にすぎないのでは。古本を含め読書を愛する人が年々減り、日本の豊かな活字文化が衰退していく-。そんな諦観、静かな抗議も込められているように思う。

 いつしか、一枚紙は寄せ書きのようになった。「マンガ 全巻そろえたかった~」「残念! 残念」「素敵な本とのであいをたくさん頂きました。本当にありがとうございました」…。惜しむメッセージは次々と。私も一筆添えたい。店主さまへ。防疫も本の世界も、希望はまだあると信じたいです。 (小野浩志)

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