リゾート地を襲った津波…瞬く間に拡散した映像 スマトラ沖津波16年

西日本新聞 くらし面

新局面 災害の時代―後悔しない備え(30)

 とても身近な存在となった動画共有サイト「ユーチューブ」。広まったきっかけの一つは、2004年12月26日にインドネシアを震源に、約23万人の犠牲を出したスマトラ沖津波だといわれています。

 クリスマス休暇でくつろぐ世界中の人々が、タイのリゾート地プーケットを襲う津波の映像を目にしたのです。前触れもなく建物や人や車が押し流される衝撃的光景。被災者それぞれが撮影した映像がユーチューブで繰り返し再生され、瞬く間に拡散したのでした。

 特に北欧やドイツなどからの観光客が多く犠牲になりました。彼らの母国では地震による津波は起きないので学校教育で津波を学ぶ機会はありません。いえ、学んでいても無理だったでしょう。地震国の日本人であっても犠牲になったように、タイでは地震の揺れをほとんど感じないまま遠地津波に襲われたからです。

 プーケットの第1波の映像は、押し波から始まり前兆現象もなく津波に襲われる様子を伝えています。これを機に、ユネスコ政府間海洋学委員会が国際津波警報システムを構築し、揺れを感じない遠方の国にも危険を知らせることが可能になりました。

 一方で震源に近いインドネシアでは引き波から始まったので、海岸に取り残された魚を拾いに集まった子どもが押し波にさらわれました。津波は地域によっては押し波で始まることがあります。必ず引き波から-と勘違いしていて地震発生後に海に見に行く人がいます。非常に危険です。

 実は研究者の多くが東日本大震災まで、津波の様子をライブで見た経験はなかったのです。それまでは事後の現地調査で痕跡を頼りに津波の高さを測り建物被害の大きさを見て、威力に震撼(しんかん)していたのです。この震災後、被災者の撮影動画がユーチューブに多く残されました。研究者は実際の浸水高や速度を割り出してリアルなシミュレーション動画を作るなど、防災と研究に役立てられました。

 ところで国土交通省は14年、日本海での大規模地震に伴う最大津波高の予想を沿岸の自治体ごとに発表しました。6年たっても大半の自治体は津波ハザードマップに落とし込んでいません。報道も少なく、知らない人も多いと思います。

 九州では長崎県壱岐市が地震発生25分後に九州最高の5・3メートル、佐賀県唐津市は38分後2・6メートル、福岡県宗像市が4分後4・4メートル、福津市は最短2分後4・2メートルなど。「日本海の地震津波想定2014年」でネット検索をお勧めします。

 日本海側は南海トラフ地震より震源が陸に近い断層型地震の想定で、揺れてすぐ沿岸から逃げても間に合わない地域があります。断層型地震で津波警報が間に合わない状況を記録した映像は、まだユーチューブでも配信されていないと思います。 (九大准教授)

 ▼防災イベントのお誘い 来年の1月17日正午から、阪神大震災の節目に合わせた恒例の非常食ランチ会をオンラインで開催します。参加希望の方は以下のアドレスへお申し込みください。prepareforfoods0117@gmail.com ※@は半角にしてご入力ください

 ◆九州大准教授  杉本めぐみ(すぎもと・めぐみ) 京都府生まれ。京都大大学院修了(地球環境学博士)。東京大地震研究所特任研究員などを経て、2014年度から九州大助教、20年度から准教授(男女共同参画推進室)。専門は防災教育、災害リスクマネジメント。在インドネシア日本国大使館経済班員として2004年スマトラ沖津波の復興と防災に携わる。「九州大学平成29年7月九州北部豪雨災害調査・復旧・復興支援団」メンバーとして福岡県防災賞(知事賞)受賞。編著に「九州の防災 熊本地震からあなたの身の守り方を学ぶ」。

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