死ぬまでに残したい思い出

西日本新聞 社会面

 家族が今月上旬、「Go To トラベル」を利用して1泊2日の旅行に出た。スイカ畑に囲まれたホテルで「温泉が気持ちよく4回も入った」。車で1時間の近場でも、かなり楽しめたらしい。

 翻訳家岸本佐知子さんが新刊「死ぬまでに行きたい海」で22の旅の記憶をつづっている。父の生家を訪れると、見たことのない少年時代の父が頭の中で再生される。いがぐり頭で、おやつはキュウリ。でも、本人に確かめることはかなわなかった。人々のささいな記憶が「その人の退場とともに」失われてしまうのが「苦しくて仕方がない」という一文に息が詰まった。

 忙しいのを言い訳に、私には喪失が自分を苦しめるような思い出が少ないのかも。いつかこの世を去るまでに、たくさんつくっておこう。温泉に漬かってほほ笑む子供の写真を眺めて思った。近く一時停止される「Go To」が本格再開したら、2人でどっか行こうか。 (池田成史)

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