「もし私が感染すれば…」葛藤抱える看護師 娘がいるから頑張れる

 コロナ禍の市民生活を現場で支える医療従事者らエッセンシャルワーカー。看護師の裕子さん=仮名、30代=は福岡市の病院で働く。担当する病棟には、がん患者ら免疫力が弱い人が多い。「もし私が感染すれば、あっという間に患者さんを死なせてしまうかも」。危機感は強い。

 緊急事態宣言が出た4月、在宅勤務に切り替える人が増えた。ある朝、娘(6)が通う保育園から電話があった。「クラスはきょう娘さん1人だけなんですけど、来られますか」。台風が来ても、子どもの体調が悪くても自分はテレワークなんかできない。夫も職場の定休日以外は休めない。「休めないのは私一人なんだ、と初めて気が付いた」

 夏ごろ、担当する患者がコロナに感染した。マスクやガウンなど常に“フル装備”だったが、PCR検査の結果を待つ数日間は「むちゃくちゃ怖かった」。家の中でもマスクを着け、タオルは別にした。でも娘は寝床で口元ギリギリまで近づいてくる。「うつさないのは無理」と覚悟した。

 途切れぬ緊張の日々。世の中にいら立つこともあった。10月末のハロウィーン、福岡市の警固公園で若者たちが大騒ぎする姿をニュースで見かけた。マスクなしの人も多かった。「自分は大丈夫」と言っても感染したら病院に来るはず。無責任さに腹が立った。

 3月に送別会が中止になって以降、職場の飲み会はない。娘の誕生日に合わせた旅行は他の人と接触しないグランピングにした。友人との外食も極力控えている。「医療従事者だから当たり前って言われるけど、私たちが我慢しても感染者は日に日に増えている」。行き場のない思いが募る。

 「患者さんにも家族にも絶対後悔してほしくない」と、最期をみとる仕事の重みに誇りを感じてきた。なのに、家族が面会できるのは、いまわの際のわずかな時間だけ。言葉を交わせない容体のときもある。「元気な時間もあるのに会わせてあげられない。もったいないと思うこともあります」。葛藤を抱える毎日だ。

 思うように外出もできない日々の中でふと思った。家族がいなかったらどうなっていただろう。娘が生まれて8カ月で復帰し、夜勤をこなしてきた。「この子がいるから頑張れる」。仕事のことを理解し気遣ってくれる娘がいとおしい。

 年末年始の休みは31日だけ。「第3波」に医療機関は追い詰められている。「仕事が嫌とか思ったことはない。ずっとそういう生活してきたから。でも個人の努力じゃどうしようもない段階に来ているんじゃないか」と感じる。

 自粛ムードが強まる一方で、感染対策の緩みが気になる。あふれる情報の真偽を見定める毎日に、皆疲れ果てている。自分の“正しさ”に合わない相手を責める風潮も、ますます世を覆っていないか。自分が間違っているとは思わないけれど、「世間の人とは違うんだろうなあ」と思う。いや、もしかすると「私のほうがずれてるのかな」。 (金沢皓介)

離職、15%の病院で

 看護師の労働環境は厳しさを増している。日本看護協会が22日に発表した調査結果によると、9月に全国8300病院を対象に行った調査で、回答があった2765病院のうち、看護師や准看護師の離職があったのは15.4%。新型コロナ感染症の患者を受け入れた医療機関に絞ると21.3%に上った。

 個々の看護師らへの調査では、3万8479人のうち、20.5%が差別や偏見があったと回答。「家族や親族が出勤を止められた」「子どもが保育園や幼稚園の登園を断られた」というものもあった。

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