戦禍伝える異色の市誌

西日本新聞 社会面 野津原 広中

 その本は768ページ中の110ページを割き、日中戦争や太平洋戦争の戦没者2930人の実名を載せている。軍の階級や亡くなった日付と場所、住所、遺族名も、福岡県久留米市内の校区ごとに記す。「続久留米市誌下巻」(1955年刊)。この夏、戦争を振り返る企画の準備で手にした。

 45年8月11日の久留米空襲で落命した市民212人の実名も掲載する。お名前を見ながらそれぞれの人生に思いをはせた。火葬場主任が見た空襲当日の焼き場の混乱や翌日の敵機再襲来の生々しい証言も。戦中の戦意高揚集会、敗戦直後の米軍将校の来訪、戦後復興計画も詳述する。

 続市誌は、上下巻で戦争を挟む31~55年のわずか25年間を主に記録した、異色の自治体史だ。戦禍を歴史に刻まなければ、との編集者の意志を感じる。戦後75年の年が暮れようとしている。来年以降も戦時中を知る方の声や、埋もれかけた戦争遺跡を記事にしたい。 (野津原広中)

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