「まさか巫女になるとは」JAL地上係員、新年は神社でおもてなし

西日本新聞 社会面 井崎 圭

 就職した時には想像もしていなかった。まさか新年に巫女(みこ)になるなんて。

 福岡県宗像市の宗像大社。21日、初詣に備えた巫女の研修会が始まった。年末年始、アルバイトを募る神社は多いが、この日集まったのは日本航空(JAL)グループのグランドスタッフ(地上係員)。新型コロナ対策で人手を確保したい大社と、空港業務が減ったJAL。お互いの事情が一致した。その中に、白衣に緋袴(ひばかま)姿の立山佳奈さん(24)もいた。

 熊本県山鹿市出身の立山さんが業界を志したきっかけは、高校時代、カナダの短期留学から帰国する日の出来事だった。勝手が分からない異国の空港。自分一人で手続きを進めないといけなかった。心細さが伝わったのか、現地の地上係員が優しく話し掛けてくれた。片言の日本語がどれほど不安を和らげてくれたか。仕事への憧れが芽生えた。

 大学で語学力を身につけ、JALグループの採用試験に合格。4月から地上係員として福岡空港で働くことが決まった。

 だが、憧れの職業へ一歩を踏み出した4月、緊急事態宣言が発令。恒例となっている羽田空港格納庫での入社式は中止に。1カ月の自宅待機を命じられた。「これからどうなるの」。15人の同期と励まし合った。

 5月、ようやく空港での勤務が始まった。国内線カウンターでの搭乗手続きや手荷物の預かりが主な仕事だ。空港を訪れた乗客と最初に接する地上係員は、航空会社の印象を決める大切な存在。短い時間に、いかに満足してもらえるか。ある先輩は乗客の白いトランクをわざわざビニールで覆っていた。運搬中に汚れないための気配り。高い職業意識を感じた。

 収束が見えないコロナ禍に、航空需要は低迷を続けている。カウンターに長蛇の列ができるはずの夏休みもなかった。旅行業界が沸いた「Go to トラベル」も中断され、「第3波」が年末年始の移動にも暗い影を落とす。そんな状況から、JALは宗像大社への社員派遣を申し出た。社内で募ると、「働けるだけでありがたい」と募集人数を上回る100人が手を挙げた。立山さんら31人が元日から11日まで交代で派遣される。

 巫女を務める日が迫ってきた。自宅では、お守り30種類の一覧表を見ながら名前や価格を暗記する。代金は「初穂料」、感謝を伝える時は「ありがとう」ではなく「ようこそお参りくださいました」。神社独特の言葉遣いも練習している。

 入社以来、JALのファンを増やすことを目標に置いてきた。それは神社でも同じ。「参拝客が『宗像大社に来て良かった』と思うように奉仕したい」。それこそがプロだと思う。今与えられた仕事を懸命に頑張り続ければ、視界が晴れる日がきっと来る。そう信じている。 (井崎圭)

雇用守る人材シェア

 コロナ禍で、航空業界の業績は急速に悪化した。航空会社は巨額の赤字に陥り、破綻する格安航空会社(LCC)も。航空大手は人件費の圧縮と、減便で生じた人員の余力を活用するため、客室乗務員らを家電販売店やコールセンターへ一時的に出向させている。九州では、福岡空港に勤めるJALグループの男性社員が大手物流会社に出向している。人手が足りない会社が業績不振の企業から人材を受け入れる「従業員シェア」は、コロナ禍に雇用を維持する手法として注目されている。

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