新天地で家族育む 横浜から福岡へ移住、理想の生活に笑顔

西日本新聞 一面 吉田 真紀

 新居から車で5分、約1ヘクタールの芝生が広がるカブトの森公園(福岡県篠栗町)。1歳8カ月の息子が落ち葉を手に「はっぱ、はっぱ」と初めて口にした。テントウムシも、あぜ道もオリオン座も、都会育ちの息子にとって「初めて」だらけの新天地は、職場に近い博多駅まで電車で17分。「いいとこ取り感すっげえな」

 大阪市出身の南崎健太郎さん(31)は昨年8月、横浜市から縁もゆかりもない福岡県に「移住&転職」。妻美紀さん(30)、長男蒼人(あおと)ちゃん(1)との“密”な時間を満喫している。

 7月までは首都圏で満員電車に揺られていた。電子部品を製造する大企業の営業マンで韓国駐在も経験。午前6時すぎに社宅を出て、電車を3本乗り継ぎ都内へ。月1回は1、2週間の海外出張。初めての子育ては、美紀さんの母(64)が鹿児島市から度々来てサポートしてくれた。

 コロナの影響で3月末に始めた在宅勤務は最高だった。1日30分もなかった息子との触れ合いは3、4時間に。「パパ」と初めて呼ばれた。家族と向き合える理想の生活。でも、出社の再開は時間の問題。数年に一度の海外転勤は今後も避けられそうになかった。

 「家族の時間も減るし、感染リスクも高いし、やだな」。夫婦で相談し「えいやで引っ越そう」と決意。新天地は、お互いの実家の中間で、庭付き一戸建てにも手が届きそうな福岡に決めた。4月末、移住前提の転職活動を始めた。「どうせやるならやりたいこと」。新卒時の就活で志望していたIT業界に挑んだ。

 面接は在宅でガンガンできる「フルリモート」で。寝室にパソコンを置き、上半身だけスーツ姿で面接官に「初めまして」。1カ月半で、7社中2社から内定をゲットした。「意外になんとかなるな」

 家探しだって「フルリモート」。エリアは博多に近く、グーグルマップを見て気に入った篠栗町に。「リモート内見可能物件」なら、不動産会社のスタッフがスマートフォンで外観、周囲の店、部屋の隅々まで生中継してくれる。

 「今電車走ってます。聞こえますかー?」「そんな気にならないっすねー」。窓を開けた室内の音も確認。現地で寝室の幅を測ってもらいつつ、横浜ではベッドを測り、家具の配置も想像できた。3LDK(78平方メートル)、家賃7万3千円の新居はリモートの印象通り。ご近所さんが普通にあいさつしてくれる「都会で絶対ない」文化だけが、うれしい想定外だった。

 転職先は、働く時間も場所も休みも自分で決められて、保育園の送迎や散髪を優先できる。「自分を、家族を大事に。それが当たり前の社会になればいいな」。年収は100万円以上減った。でも「めちゃくちゃぜいたく」な暮らしを働きすぎな日本人に勧めたい。

 思ってもみなかった土地での年越し。まだ5カ月の新入りだし、先が見えにくい時代だ。でも新年をもっといい年にしていく。家族と、ここで。 (吉田真紀)

自然環境に関心高く

 政府が東京都、埼玉、千葉、神奈川県在住の20~50代1万人を対象に行った調査(昨年1、2月)によると地方暮らしに関心を持っているとの回答は全体の49.8%。若い人ほど関心が高かった。最も多い理由は「豊かな自然環境がある」(54.8%)。移住相談件数(昨年4~11月)は福岡県が2842件(前年同期比1.52倍)など九州各県で増加傾向だった。

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