身近な自然五感で堪能 豊前・犬ケ岳で森林セラピー 心の凝りほぐれ

西日本新聞 北九州版 浜口 妙華

 福岡県豊前市が開催する「森林セラピー」のイベントに申し込みが殺到しているという。新型コロナウイルス禍で不自由な生活を強いられているので、癒やしを求める気持ちは良く分かる。しかも、ただ森の中を歩いてリラックスするだけではないそうだ。かつて山伏の修行の場だった犬ケ岳(標高1130・8メートル)を巡る体験に参加し、人気の理由を探ってみた。

 面積の7割を森林が占める豊前市は、癒やし効果が科学的に認められるとして、東京のNPO法人から「森林セラピー基地」の認定を受けている。秋深まる昨年11月、中級の「せせらぎの森コース」に挑戦した。約50人もの参加希望者がおり、約10人ずつ、5班に分かれてスタートした。

 コースは約4キロ。案内役の神薗真人さん(72)と岡本千恵美さん(58)と一緒に、犬ケ岳の麓の里山を、ゆっくりと歩く。

 1キロほど進むと、急な上り坂の登山道に入り、一面の落ち葉を踏みしめる。「まるでオレンジ色のじゅうたんだね」。参加者の明るい声が聞こえた。鳥がさえずり、近くの岩岳川から聞こえるせせらぎの音が心地よい。

 さらに500メートルほど歩き、川沿いの岩の前で立ち止まった。神薗さんが「コケをルーペで見てみましょう」と言った。この辺りにはスギゴケやゼニゴケなど、さまざまな種類のコケが生えているという。岡本さんは「水を掛けると、コケの表情が変わりますよ」。霧吹きで水を掛けてみると、コケに艶が出て膨らみ、確かに表情が変わったように見えた。

 「きれいで、かわいい。生きているのを感じる」。福岡県苅田町の団体職員伊藤由美香さん(50)は、うれしそうに話した。コケがぎっしりと生えた岩を手で優しく触って感触も楽しんだ。

 1時間半ほど歩いて、開けた場所で切り株に座った。岡本さんに「目を閉じて深呼吸をしてみて」と促され、深く息を吸った。ほんの1、2分だったが、体の力が自然に抜けるのを感じた。五感が研ぎ澄まされているのか、自然の音がより近く感じた。

 下山の途中で、岡本さんから丸いシールを渡された。何をするかと思ったら、木や石にシールを貼って顔をつくり、スマートフォンで写真を撮るのだという。目に見立てたシールをどこに貼れば顔に見えるか-。参加者は童心に返って、木や石の模様を見つめてはシールを貼っていた。

 最後は、茶に関する企画展が開催されていた「求菩提資料館」に立ち寄り、温かい地元産の緑茶と和菓子をいただいた。

 約3時間、ゆったりと自然に触れ、のんびりとした時間を過ごした。きつい坂道はごく一部で安心した。心の凝りがほぐれるのを感じた。

 よく近くの山に登るという同県行橋市下稗田の主婦栗焼タミ子さん(69)は「頂上を目指して懸命に登る時よりも、自然を身近に感じることができた」と感激していた。私も息が詰まったときには、またリラックスしに来たい。 (浜口妙華)

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 コロナ禍で遠出できないのに、近場にはいい遊び場がない-。そんな嘆きを耳にする。本当にそうだろうか。ちょっと探せば、楽しさは足元に転がっている、はず。北九州・京築の記者たちが「わがまち」の魅力を見つけ直す「マイクロツーリズム」に出掛けた。

 森林セラピー基地 豊前市は2013年、東京のNPO法人「森林セラピーソサエティ」から認定を受けた。初級~上級の六つ程度のコースを実施し、ヨガやアロマ、温泉を組み合わせたものもある。新型コロナで一時中止していたイベントは昨年9月に再開。今年は3月下旬から開催予定で、個別に予約すればコースの体験は随時可能(1人から)。料金は1500~3千円程度。申し込みは市商工観光課=0979(82)8086。

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