若松で化石探し 「お宝」目指し水辺をはう

西日本新聞 北九州版 古瀬 哲裕

 「骨の化石 新種と発表 ペンギンモドキ」。10月末、北九州市小倉北区の藍島で過去に見つかっていた化石が、絶滅した海鳥の新種の骨だったと分かったというニュースが北九州版に載り、私の目は釘付けになった。こんなに近くで貴重な化石が発掘されていたことに驚くとともに、もし自分で希少な化石を発見できれば「大ニュースになるのでは?」と、妄想が膨らんだ。しかし素人1人ではどうしようもない。専門家に助けを求め、「お宝探し」に出掛けた。

 協力してくれたのは、市立いのちのたび博物館(八幡東区)の学芸員で、古生物が専門の太田泰弘さん(58)。夕日が美しい景勝地として知られる若松北海岸の岬「遠見ケ鼻(とおみがはな)」で待ち合わせた。

 波打ち際に着き、辺りを見回していると、太田さんから「もう見えてますよ」と意外なひと言。足元の岩をよく見ると、貝殻のような物がびっしりと埋まっている。絶滅した「キッシュウタマキガイ」という二枚貝の化石で、珍しいものではないという。

 きれいに形をとどめた貝は見当たらない。太田さんは「貝の死骸が波で打ち寄せられたか、潮の流れで集まった場所だったと考えられている」と教えてくれた。

 海岸を北側に向かって歩くと、穴ぼこだらけの岸壁が見えてきた。「これも化石です」と、太田さん。なだらかな曲線を描いている穴は、エビやカニの仲間が作った巣穴の跡が化石になったもので「サンドパイプ」と呼ばれるらしい。

 近くには嵐の痕跡が化石として残った地層もあり、波打ったような多くの線が斜めに走っている。

 干潮時に板状の岩盤が姿を現す「千畳敷」まで約1キロ移動し、はいつくばって化石を探していると、太田さんが「ありましたよ!」と声を上げた。体の一部がガラス質になり、透けてきれいな長さ数センチの巻き貝の化石だ。「キリガイダマシ」という今も台湾以南の熱帯太平洋に生息している貝の仲間だそうだ。周りを探すと、同じ貝が次々と見つかった。「こんなにすぐ見つかるなんてツイてますよ」と、太田さんの声も明るい。

 時を忘れて化石探しに没頭し、気づけばスタートから3時間近く。潮が満ちてきた。「大発見」には至らなかったが、わずか1キロ程度の範囲に、こんなにも多様な化石があるとは。まさに化石の宝庫だ。

 若松北海岸は、県北部から山口県西部にかけて分布する三千万年前の地層「芦屋層群」の一部で、藍島もこれに含まれる。遠見ケ鼻は地球環境の変化を記録する重要な資料として2012年に県の天然記念物に指定された。

 都市の近くにありながら開発を免れ、良い状態で残る地層は少ないそうだ。

 「狭い場所に奇跡的に多くの化石が集まっている。こんな場所は世界でも貴重だと思う。だから、次の世代にこのまま残したいのです」。太田さんの言葉に深くうなずいた。 (古瀬哲裕)

 遠見ケ鼻 若松北海岸(若松区)にあり、響灘に突き出した岬。遠見ケ鼻の入り口には駐車場がなく、近くに市営バスのバス停「かんぽの宿北九州」がある。化石は海沿いにあるので、干潮時が観察しやすい。遠見ケ鼻は県天然記念物に指定されており、化石を持ち帰ることはできない。

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