“お願いベース”の自粛 コロナ慣れで「首都圏緊急事態」効果不透明

 政府が首都圏の1都3県を対象に緊急事態宣言再発出の検討に入ったのは、新型コロナウイルスの感染拡大の要因である「人出」が減らないからだ。宣言で人の外出と飲食店の営業時間を制限して流れを変えたい狙いだが、現行法は強制力がない「お願いベース」。いくら旗を振ろうとも、防疫の成否は詰まるところ、国民一人一人が意識と行動を変えられるかにかかっている。

 菅義偉首相は4日の年頭記者会見で、宣言発出に傾いた理由を「東京都や近県で繁華街の夜の人出はあまり減っていない。夜の会合を控え、飲食店の営業時間短縮にご協力いただくことが最も有効だと考えた」と説明した。

 実際に、数字が物語る。

 携帯電話の位置情報を基に、ソフトバンク子会社のアグープ(東京)が解析した3日午後9時時点の人出を、緊急事態宣言が初めて発出された昨年4月7日と比べてみる。すると、東京・歌舞伎町7・9%増▽渋谷センター街93・9%増▽横浜市の元町・中華街駅10・7%増-などとなった。

 NTTドコモの分析でも、3日午後3時時点と4月7日を比べた場合、1都3県のターミナル駅の人出は9・3~38・1%も増えていた。「静かな年末年始」からはほど遠かったのだ。

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 飲酒を伴う会食が、ウイルス感染拡大の主要因-。

 政府の感染症対策分科会は年末、酒類を提供する飲食店を「急所」と捉え、さらなる時短要請の必要性を訴えていた。今回の「限定的、集中的な」宣言で、政府が国民生活全般にわたる「活動制限」でなく、夜の飲食店対策を重点に据えようとしているのもこのためだ。

 ただ、首都圏では既に午後10時までの時短要請をしている上、仮に宣言を発出しても法的拘束力はない。事実上の「営業補償」となる給付金とセットにして罰則を科す法改正作業も急がれているが、施行までには時間を要する。専門家には、宣言の効果を疑問視する声もある。

 では、首相も期待する国民へのアナウンス効果はどうか。昨年の宣言前後で人々の行動がどう変わったかを、東京大の渡辺努教授らが解析した結果がある。

 それによると、4月7日の宣言発出を境に外出を自粛した人は急増したが、東京都で見ると、政府による「ステイホーム要請」「一斉休校」がもたらした効果は全体の4分の1程度にとどまっていた。最も大きかったのは、人々が自ら毎日の感染者数など新たな情報に接し、危機感を抱いたことだったという。渡辺氏らは「感染封じ込めに重要なのは『強い措置』ではなく、人々の行動変容を促す適切な情報の提供であることを示唆している」とする。

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 「コロナ慣れ」や「自粛疲れ」の言葉も耳にする現在の日本。「国民が、メッセージを聞こうとしなかったり、どういう状況かを理解しようと努めなくなったりしている」(日本医療法人協会の太田圭洋氏)中で、2度目の宣言が奏功するかは分からない。

 福岡県をはじめ、コロナ「第3波」が本格化している九州にとっても宣言は無縁とは言い切れない。

 西村康稔経済再生担当相は4日の会見で、1都3県以外でも、新規感染者数やコロナ対応病床の占有率など六つの指標を注視しているとし、「(宣言を発出するかは)医療の逼迫(ひっぱく)具合などを総合的に判断する」と述べた。 (河合仁志)

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