みやこ町を自転車散策 古代と同じ風を感じて

 福岡県みやこ町を「自転車のまち」に-。そんな取り組みを昨年、みやこ観光まちづくり協会が始めた。仕掛け人は事務局長の水上斗夢(みずかみとむ)さん(36)。7月に最新マウンテンバイク5台を配備してレンタルを開始。3種類のモデルコースを設定してサイクルマップを作り、参加者を募ってイベントも開いた。今、新たなモデルコースも検討中。その魅力と課題を探ろうと、レンタル自転車で勝山地区を巡った。

 サイクリングチームは水上さん、協会事務局員の蔵本斉子(なおこ)さん(43)、IT会社社長の久木元伸如(のぶゆき)さん(51)=行橋市=と私の4人。私は初のマウンテンバイクで、14万円もする自転車も初めてだ。タイヤが太くて安定感がある。

 最初の目的地は国指定史跡の綾塚古墳。全長19メートルもある複数の石室は国内屈指の規模。「祭られた人物の強大な権力を示している」という。特別に現地ガイドをしてくれた町歴史民俗博物館学芸員、井上信隆さん(47)の説明だ。

 この古墳は石棺が安置されている最奥の石室手前まで行けるが、その先は鉄柵で仕切られ入れない。そこで、協会が昨年つくったiPhone(アイフォーン)向けのVR(仮想現実)アプリ「みやこ360」を試してみた。

 町の観光ガイドブックにスマートフォンをかざすと、掲載施設の360度パノラマ画像が見られる仕組み。開発者の久木元さんが鉄柵の前でアプリを起動すると、鉄柵をすり抜けたように石棺が目の前に現れ、ぐるりと石室内を見渡せた。「まさにアプリの本領発揮」。一同、納得した。

 井上さんによると、綾塚古墳の背後にある山には小さな古墳が千基以上も密集しているという。でも、山に入ってはいけない。「動物と間違えて猟師に撃たれる可能性があるんです」。井上さんも古墳探し中、猟師に遭遇したことがあるらしい。

 1600年建造の黒田神社、町指定史跡の庄屋塚古墳、県指定史跡の扇八幡古墳などを巡る。ちょっと走れば文化財に出くわすところが、みやこ町のすごいところだ。

 そして古代のダム式ため池があった池田遺跡。遺構は埋め立てられ水田しかないが、「車でなく自転車だから分かることもある」と水上さん。古墳が密集する地域から約3キロ、上り坂が続き、かなり苦しかった。この傾斜を利用して水をため、下流の集落へと流した古代人の営みを想像する。同じルートをたどり、同じ風を浴びてここまで来たのだろう。

    □   □

 既存の協会推奨3コースは、豊津地区の歴史を散策する「学」8・3キロ、今川サイクリングロードを走る「涼」14・3キロ、犀川地区の山奥に入る「鬼」31・1キロ。興味の対象や難易度で選べる。勝山地区に新コースができれば、町内全域にコースが広がる。

 ゴール後、課題を話し合った。「トイレがない」「休憩できる施設がほしい」。久木元さんは「食べたり、飲んだり、人と話せたり、プラスアルファが必要」と注文した。

 「課題は見えてきた。素材は十分。あとは楽しんでもらえる仕組みをどうつくるか。いつか全国のサイクリストが集まるまちにできたらいいですね」。水上さんは闘志を燃やしていた。 (石黒雅史)

 みやこ観光まちづくり協会の「レンタサイクル」 協会事務所を兼ねる町総合観光案内所(豊津)にマウンテンバイク5台を配備。料金は1日(午前9時半~午後4時)1500円、1週間3千円、1カ月1万円(税込み)。身長145センチ以上に限る。協会=0930(33)5771。

関連記事

福岡県の天気予報

PR

PR