地域の防災力、報道で高めたい

西日本新聞 筑豊版 中川 次郎

 「天災は忘れたころにやって来る」。戦前に活躍した物理学者、寺田寅彦の警句とされるが、現在は毎年各地で豪雨や台風の犠牲者が出ており、もはや「天災は毎年やって来る」。

 福岡県朝倉市の朝倉支局に勤務していた2017年7月、豪雨を取材中、自らも被災し「死ぬかも」と考えたほどの経験から、災害時に大切な「早く逃げる」を訴える防災報道に力を入れるが、伝わらないこともある。

 災害が起こり、危機的な状況でも、人は「自分は大丈夫」と思ってしまう心理的特性「正常性バイアス」が働くことがある。だから、他人から避難を促されても、二の足を踏む。

 では、どうすれば良いか。東大大学院の片田敏孝特任教授(災害社会工学)は著書「人に寄り添う防災」(集英社新書)で、正常性バイアスを乗り越えるため共感のコミュニケーションを挙げ、次のように記している。「大切なのは避難しないのは避難しないなりの理由があると理解することであり、そのうえで、避難する動機づけを相手の立場から考えて提示すること」

 例えば「亡くなったおじいちゃんとの思い出が残る家にいたいことは分かるけど、おばちゃんが逃げないと私も心配で逃げられない。東京の息子さんも川に流されて亡くなったら悔やむよ。一緒に避難しよう」。

 このようなコミュニケーションは相手に信頼される関係でないと成り立たない。と言いながら、その関係を作るのは容易ではない。

 飯塚市の飯塚片島まちづくり協議会には防災に関する部会があり、住民参加の避難所運営会議、非常食や避難所で使う簡易エアマット購入など「備え」を進める。その中で、民生委員らが高齢者宅を訪問する際、災害時の避難についても話すなど、要配慮者とのコミュニケーションに力を入れている。

 協議会の拠点「飯塚片島交流センター」の今福裕子センター長(58)は「災害時、行政には限界があり、地域で何ができるか平常時から考えないといけない。助け合いの中しか結果は生まれない。人と人がつながれば助かる命がある」。

 筑豊でもいつ、何が起きるか分からない。「地域の防災力」を高めるため、地域や行政の先行事例を紹介するだけでなく、自ら知識、技能を身に着けるため、昨年、防災士の試験を受け、合格した。もしもの時に一人でも多くの人が助かるために今年も防災報道に取り組む。

◆中川次郎(なかがわ・じろう) 1976年、宮崎県高鍋町生まれの44歳。2001年入社。田川支局、編集センター、福岡県政担当、朝倉支局などを経て、17年11月から筑豊総局勤務。趣味はソフトボール。ただ、2度指を骨折し、仕事に支障が。同僚からは「引退勧告」も。医者に「痩せないと病気になる」と言われ、今年の目標は「1日平均1万歩」。

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