「第2の心臓」を守る削蹄師、師弟コンビで新たな目標に挑む

西日本新聞 長崎・佐世保版 松永 圭造ウィリアム

 牛にとって、ひづめは「第2の心臓」という。

 伸び過ぎると足から皮膚病になったり、不安定な立ち姿で負担がかかったりする。それが乳牛は乳の出に、肉用牛は肉質に影響する。

 そんなひづめの手入れをするのが削蹄(さくてい)師という職業だ。長崎県内には約60人いる。諫早市の龍田太郎さん(36)は削蹄競技九州大会で優勝した経験もある実力者だ。

 仕事は体力勝負。相手は大型の動物で力も強い。体重600キロほどの牛を引いて、ロープで枠に固定する。足を上げ腕ではさみ、専用の鎌「蹄刀(ていとう)」を使い、ホルスタインや黒毛和牛などのひづめを削る。地面に接するひづめの角度は前足45度、後ろ足50度が理想とされる。

 牛は繊細な動物だ。削蹄のストレスで、1日約40リットル出ていた乳が10リットルほどに減ってしまうこともあるという。そのためなるべく早く、負担をかけずに終えなければならない。

 「この仕事のやりがい? 足を痛がっていた牛が削蹄後に元気になることかな」

 高校卒業後、馬に蹄鉄を装着する装蹄師の資格を取り、2004年から宮内庁で2年間働いた。ただ、地元で独立する夢を諦めきれず当時の師匠に相談。「九州では装蹄だけで食っていけない」と助言を受けて牛削蹄にも挑戦した。師匠の住む宮崎市で2年間学んだ。「無給で丸2年。文字通り『修行』だった」と振り返る。

 08年、故郷で龍田装削蹄所を開き独立。口コミだけで売り込みはしないのが龍田さん流だ。理由は「どんなに営業をかけても、確かな技術がなければ信用は得られないから」。

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 そんな職人かたぎの龍田さんが昨年春、初めての弟子を迎えた。諫早農業高校を卒業したばかりの藤本広志さん(19)だ。

 馬術部に所属していた藤本さんが高校2年の時、県内の国体強化選手に選ばれた。その時の指導者が母校の先輩で、馬術で国体出場経験がある龍田さんだった。

 藤本さんは小さい頃から動物が好きだ。特に好きなのは牛。一頭一頭体の模様や骨格、顔の表情などそれぞれ違う。「牛にも個性があるんです」と魅力を語る。

 高校3年の時、龍田さんに誘われて削蹄の現場を見学に行き、仕事ぶりに魅せられた。「こんな職業があるんだ」。龍田さんから弟子入りを勧められ、二つ返事で決めた。

 師匠となった龍田さんの意識も変化。技術を人に伝える難しさを実感する。「指導するからには自分が完璧でないと」。全国大会優勝という新たな目標も定まった。

 「いつかは師匠を超えたい」と藤本さん。昨年12月には「2級認定牛削蹄師」の資格試験に挑んだ。春に合格発表がある。 (松永圭造ウィリアム)

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