緊急事態宣言 最低限の「範囲」に政権固執

 新型コロナウイルスの感染拡大が止まらない首都圏1都3県に7日、緊急事態宣言の再発出を決めた菅義偉首相。この段階でも経済への打撃回避に心を配り、期間を専門家の主張より短い1カ月間に、業種も飲食店などに限定した。全国の感染者数は初めて7千人を突破し、ウイルスの大波が日本を洗っている。政権が混乱を来し、これ以上の「後手」を踏むような余地はほぼ残されていない。

 「ここ最近、全国的にさらに厳しい状況となっており、強い危機感を持っている」

 夕方、官邸で開かれた対策本部の会合で、首相は緊急事態宣言に踏み切る理由をこう説明した。続く記者会見では「1カ月後には必ず事態を改善させる」と決意を強調。午後8時までの営業時間短縮に応じた事業者に対し、4都県が行う協力金支払いをサポートするなど、政府の経済対策をアピールした。

 政府高官は夜、国民に首相の危機感が伝わったかと問われ、「受け手が感じることだけど、今日は良かったと思う。伝わったと思うよ」と話した。

 もともと宣言に消極的だった首相。東京都の小池百合子知事らの要請に押し込まれる形で方針転換した後も、その「範囲」を最低限に抑える姿勢に固執した。

 例えば官邸は当初、宣言の期間を「1月末」までとするシナリオで作業に入ったという。「経済への悪影響に加え、宣言後も感染拡大が止まらなかった場合に、期間の延長や業種の拡大といった『次のカード』がなくなる事態を危惧した」。官邸幹部は、対策を小刻みに打ち出す首相の戦略を打ち明ける。

 だがここ数日、そんな思惑を吹き飛ばすようなレベルで全国の感染者数が急伸した。政府の感染症対策分科会の尾身茂会長は5日夜の臨時会見で、宣言の効果によって感染が下火になる時期に関し「どんなに早くても1月末ということはない」と明言。別の専門家からも、宣言の抑止効果を最大限に活用しない姿勢を疑問視する声が続いた。

 複数の政府関係者によると、首相はこうした声に世論がどう反応するかを注視していた。

 尾身氏の発言が大きく報道されると、期間を「2月7日」までと決定。テレビのワイドショーなどが感染爆発を連日取り上げるようになり、官邸は6~7日、時短の対象業種の大幅拡大を検討のテーブルに乗せた。結局は見送ったものの、霞が関は深夜まで4都県や関係業界との調整に追われた。「方針がころころ変わり、対応しきれない」。省庁職員からは、政府のパニックぶりを憂える声が漏れる。

      ■ 

 この日、衆参両院は議院運営委員会で、宣言再発出を巡り審議した。

 野党側が要望した首相の出席を政府、与党側は拒否。立憲民主党の枝野幸男代表が「経済優先の姿勢が、結果的に経済にも悪影響を与えている」「対象が1都3県では不十分」と主張しても、答弁に立った西村康稔経済再生担当相は「12月23日の政府分科会でも、宣言を出す状況にはないとされていた」「感染動向を見ながら専門家の意見を聞いて判断したい」とかわし続けた。

 発出後、4都県以外のエリアで感染者数がさらに急増していく可能性もあるが、官邸中枢は「宣言の対象地域を追加すればいいだけだ」とこともなげに言う。

 首相が、夕方の会見で「感染の波は私たちの想像を超えた」と弁明したことが、とりもなおさず有効な対策を打ち出せていないことを証明している。「もう対策を小出しにする時は過ぎたのに…」(自民党中堅議員)との焦りは、政府、与党内からも上がり始めている。 (東京支社取材班)

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