名物ちんめん、感謝の一杯 創業60年「あま太郎」閉店へ 福岡・天神

 福岡市・天神の食堂街で、名物の麺料理「ちんめん」で愛され続けた「ちんめん あま太郎」が15日で60年の歴史に幕を下ろす。新型コロナウイルス感染拡大の影響による売り上げ減が主要因。代表の笠井静子さん(93)は「常連さんがいなければ店は持たなかった。長年ひいきにしていただきありがたい」と感謝し、最後の一杯を味わおうと常連客が詰め掛けている。

 あま太郎は1961年、衣料品店「立花屋」(福岡市)を経営していた笠井さんの夫、龍太郎さん(故人)が別事業として創業。西鉄福岡駅の高架化に伴って同年開業した「味のタウン」にのれんを構えた。

 最初は甘味どころ。しかし、売れ行きが悪かったため新メニューを模索した。ヒントにしたのは、終戦後に朝鮮半島から引き揚げた笠井さん夫婦の青春の味。若き日に食べていた冷麺を参考に、冷たい鶏がらスープとコシの強い中華麺を合わせてメニュー化した。ラーメンでも、うどんでも、そばでもない。珍しい麺だからと名付けた「ちんめん」は大ヒット。昭和の終わりごろが最盛期でいつも行列ができ、市内を中心に5店ほど支店も構えた。笠井さんは「女学生たちがファストフード代わりに使っていました」と懐かしむ。

 店は天神の街の変化とともに歩んできた。92年福岡駅の再開発によって一時休業。支店もすべて手放した。99年に完成したソラリアステージ地下2階「味のタウン」で再開したが、外食産業の多様化のあおりを受けて売り上げは徐々に減少。さらにコロナで高齢者やインバウンド(訪日外国人客)が激減し、採算が厳しくなった。

 創業から60年の節目。珍しかった麺は今「天神の定番の味」として親しまれている。笠井さんの義理の娘で店を取り仕切る女将(おかみ)の一恵さん(63)は「閉店は悩んだ末の決断だった。でもこの状況では致し方ない」と明かす。

 店は閉じるものの、通信販売は続け、麺やスープの製造体制は維持する。「天神に思い入れがある。コロナが収まり、チャンスがあればまた出店したい」。一恵さんは再起を誓った。

(小川祥平)

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