米議事堂乱入 民主政治を揺るがす汚点

西日本新聞 オピニオン面

 これが民主主義の盟主をうたう国の出来事なのか。目を覆うばかりの光景だった。

 米国で昨年11月に投開票された大統領選の「不正」を訴えるトランプ大統領の支持者が暴徒化して、米連邦議会議事堂に乱入し、一時不法占拠した。議員らは避難し、暴徒を鎮圧する警察の発砲により死者を出す惨事に至った。

 この異常な事件が起こったのは、バイデン氏の次期大統領当選を正式に認定する会議のさなかだった。トランプ氏は直前の支持者集会で「議事堂に向かうんだ」と直接の抗議を促し、その結果として、憲法が定める政権移行の手続きが妨害された。

 選挙結果を力ずくで覆そうとする暴徒を現職大統領が扇動するのは前代未聞の事件だ。世界的にも民主政治の根幹を揺るがす歴史的な汚点である。断じて許してはならない。

 言うまでもなく、トランプ氏に最大の罪がある。いかに選挙結果に納得がいかなくても、虚偽を交え利己的な言動を繰り返す姿には、まともな国家指導者としての自覚は感じられない。

 トランプ氏の任期は残り2週間を切った。それでも民主党のペロシ下院議長がペンス副大統領に大統領の罷免を求め、できなければ弾劾訴追の手続きに進む意向を示した。与党共和党からも責任追及の声が上がっている。当然のことだろう。

 事件後、トランプ政権の閣僚らが相次いで辞任した。トランプ氏もようやく大統領選の敗北を認め、議会を占拠した自らの支持者を批判した。遅きに失したと言わざるを得ない。政権移行を円滑に進める意向も表明したが、言葉だけでなく具体的な行動で示してほしい。

 この惨事を引き起こした背景には、法の支配や人権を軽んじるトランプ流政治に歯止めをかけられなかった米国政治の機能不全があるだろう。

 トランプ氏への熱烈な支持にあやかろうと同調してきた共和党の責任は重い。トランプ氏は次期大統領選の立候補に含みを残す。しかし、社会の分断を深め、未来を描くことのできない独善的な政治にはもう決別する時期ではないか。

 バイデン次期大統領にとっては、議会でも民主党が上下両院で過半数の議席を確保し、ひとまず安定した政権基盤を得られることになった。

 ただ、これで安心できるわけでない。今回の事件は米国社会の亀裂が一層深まっている現実を国内外に見せつけた。

 その修復には与野党の枠を超えて格差の是正に取り組み、民主政治を再建しなければならない。それが次期政権にとって最大の課題となる。

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