戦略なき「一番の悪手」方針転換、緊急事態再宣言 日大・福田充教授

 経済への悪影響を懸念して緊急事態宣言に慎重だった菅義偉首相は、年明けに一転して首都圏1都3県への発出に踏み切った。新型コロナウイルスの感染拡大と知事の要請に追い込まれた末の決断だが、営業の自粛要請は飲食店を中心に限定。感染爆発の瀬戸際に立つ今となっては、感染抑止の効果は見通せない。政府の一連の対応は、適切だったのか。危機管理に詳しい日本大危機管理学部の福田充教授に聞いた。

 -昨年秋以降に広がった「第3波」から緊急事態宣言発令までの政府の対応を、どのように評価するか。

 「政府の危機管理は失敗だったと言える。感染症対策は『早く、強く、短く』が原則。緊急事態宣言という強い対策を取るのなら、感染拡大が深刻化して医療体制が(ひっぱく)する前に、もっと早く決断しなければならなかった。宣言下での対策の強さも、小中高校の一斉休校や人との接触8割減などを求めた昨年春に比べ、飲食店を中心とした営業時間短縮や夜間の外出自粛に限定するなど中途半端だ。発出も遅く、弱い規制では2月7日までの宣言期間は延長され、経済や人々への影響が長引く可能性もある」

 -なぜ、政府の対応が場当たり的に見えるのか。

 「安倍晋三政権時代から、新型コロナにどのように対処するのかという戦略や方針が伝わってこないからだ。2度の緊急事態宣言は政府が主体的に判断したというより、世論や1都3県の知事などに押し切られる形で発出に至ったように見える。経済を重視するなら感染再拡大に備えて医療提供体制を拡充した上で、『一定の死者や重症者が出ることを許容せねば経済は回せない』と国民に説明しなければならなかった。そうした努力も避け、のらりくらりと『Go To キャンペーン』を続け、医療崩壊が現実味を帯びてから緊急事態宣言へと方針転換したのは、危機管理上、一番の悪手だった」

 -昨年の「第1波」の時と比べ、新型コロナに対する国民の慣れも指摘されている。どうすれば行動変容を促せるか。

 「災害やテロと異なり、目に見えない感染症との戦いでは、家族などが感染しなければ自分事ととして捉えにくいという難しさがある。政府は国民に行動変容してもらうために、メッセージを発信し続けることが求められる。欧米のように私権制限を伴うロックダウン(都市封鎖)が憲法や現行法上できず、要請と自粛の『日本モデル』下ではなおさらだ。ただ、国民に自粛を求めながら菅首相をはじめとする政治家が大人数で会食を続けていた問題もあり、メッセージに説得力がなくなっている」

 -どうすれば、説得力を持って、国民に伝えられるようになるのか。

 「国民が納得して政策に従うかどうかは、リーダーへの信頼感が重要になる。失われた信頼を取り戻すためには戦略や方針を国民に丁寧に示し、責任を持って説明を尽くすことから始めるしかない。その際にはワクチン接種がどの程度まで進めばゴールなのか、どれくらいの死者数に抑えられれば受容可能なリスクとして受け入れるのかといった、具体的なロードマップやタイムスケジュールを示す必要がある。政府は足をすくわれないようにと考えてか、こうした情報を何も伝えてこなかった。国民の命よりも政権の安定を優先しているように見えてしまう。同じ姿勢を続けるようでは、国民の信頼は回復できないだろう」

 -営業時間短縮の要請に応じない飲食店に罰則を科せるよう、政府は新型コロナウイルス特別措置法の改正を急いでいる。罰則についてはどう考えるか。

 「危機に関する法律は、その最中に変えるべきではない。危機が起きている時には極端な方向に議論がふれやすい。理性的な判断ができる状況下で時間をかけて議論し、合意形成を得るべきだ。相対的に致死率が低い新型コロナが私権を制限するほどの感染症なのかという問題もある。将来、致死率が高い強毒性の感染症が流行した時、さらに強い罰則を求める議論が出かねず、(ふかん)して考える必要がある。罰則は飲食店だけが対象なのか、イベントや集会などにも及ぶのかなど一つ一つ慎重に見ていかなければ、なし崩し的に憲法で保障された私権の制限につながりかねない」(久知邦)

   ◇    ◇

 福田充(ふくだ・みつる) 1969年生まれ。コロンビア大客員研究員などを経て日本大教授。専門は危機管理学、リスクコミュニケーションなど。内閣官房の新型インフルエンザ等対策有識者会議のメンバー。

 

 

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