太陽系進化の謎解く鍵に 岡﨑隆司氏

西日本新聞 オピニオン面

◆リュウグウ試料

 小惑星探査機はやぶさ2は2014年12月、地球から約3億キロ離れた小惑星リュウグウを目指して打ち上げられた。太陽系は様々(さまざま)な天体の集合であり、ガス、岩石、水・氷、有機物(生命)など多種多様な物質で構成されている。これらの物質が「どのようなものからどのような過程でできたのか」を知ることが、はやぶさ2の目的である。太陽系が誕生してすでに約46億年の月日が流れている。どのようにして46億年前も昔の物質とその進化過程を知ることができるだろうか。

 地球に存在する物質からもその進化過程を知ることができるが、その「もと」となった物質、材料物質については多くの情報は得られない。地球の材料物質が何であるかを知るには、地球全体の元素存在度が不可欠であるが、地球深部(内部)に関する正確な情報を得ることは困難である。また、現在の地球大気は「2次大気」と言われ、地球誕生後に大部分が宇宙空間に散逸された後、残存大気が変化したものや地球内部から放出されたものである。つまり、地球は材料物質とは異なる物質へと変化(進化)してしまっているのである。このような進化した天体に存在する物質から46億年前の情報を得ることは極めて困難である。

 一方、リュウグウはその表面観測などの情報をもとに、天体内部が高温に達しなかった「進化していない天体」であり、太陽系や生命の材料物質が「なま」の状態で残っていると期待されている。地上で発見される隕石(いんせき)にも進化していない天体起源のものもあるが、「なまの材料物質」は「なま」であるがゆえに、地球の岩石や水、空気、そして人工物などによって容易に汚染(変化)してしまう。これこそが、遥(はる)か彼方(かなた)の小惑星まで探査機を送り込み、時間と労力を費やした理由である。

 昨年12月にリュウグウ試料は地球に持ち帰られ、今まさに我々(われわれ)科学者に供されようとしている。おそらく太陽系や生命の材料物質は、すでに太陽系誕生前に宇宙空間で進化を遂げた、多様なものだったと予想する。そのような物質がどのような進化を遂げて、地球や我々、生命となったのだろうか。リュウグウには我々が初めて目にする物質が含まれている可能性もある。リュウグウ試料の研究が新たな発見や謎の解明へとつながっていくだろう。

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 岡﨑 隆司(おかざき・りゅうじ)九州大理学研究院准教授 専門は惑星物質科学。20年前のはやぶさ初号機分析コンテストを契機にプロジェクトに参画。はやぶさ2では試料採取装置開発、カプセル回収、初期分析に携わる。

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